「玄関の靴、ちゃんと片づけなさい!!」
土曜の朝。
私は確かに、そう言った。
たったそれだけ。
——5分後。
うちの玄関は、なぜか“百貨店の新作発表会”になっていた。
事の発端はこうだ。
買い物に行こうと玄関を開けた瞬間、
スニーカーに足を取られ、私はほぼ人生を振り返りかけた。
右にスニーカー。
左にローファー。
ど真ん中に片方だけのサンダル。
なぜ片方。
なぜそこ。
「ちょっと!!これ何!?災害現場!?」
高校2年の息子、リビングでスマホ中。
イヤホンを外し、無表情。
「なに?」
「靴!!ちゃんと片づけなさい!!」
私は確かに言った。
“ちゃんと片づけなさい”と。
息子は一言。
「わかった。」
え、素直。
反抗期、終わった?
母、少し感動。
玄関が静かになる。
……静かすぎる。
5分後。
私はゴミ袋を持って玄関へ。
そして——固まった。
そこにあったのは、
乱雑な靴の山ではない。
整列。
完璧な整列。
スニーカー列。
革靴列。
サンダル列。
色ごとにグラデーション。
白→ベージュ→グレー→黒。
すべて、つま先の角度が揃っている。
左右対称。
間隔均等。
え、定規使った?
しかも。
私のヨレヨレの買い物用サンダルが、
なぜかセンター配置。
スポットライト浴びそうな位置。
思わず口から出た。
「……展示会?」
息子、後ろからひと言。
「片づけたよ。」
「いや、出てるよ!?全部出てるよ!?」
「でも整ってる。」
「そういう問題じゃないの!」
私は言ったはず。
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