葬儀当日。式場の扉が開いた瞬間、私は本当に立っていられなくなった。
人、人、人――視界の端まで黒い服の列が続いていて、息が詰まった。胸の奥に押し込んできたものが、一気に浮き上がってくる。こんなに来るはずがない、来てもらっていいはずがない、そう思い込んでいた自分が、扉の前で崩れそうになった。
「泣くな」なんて言われても無理だった。
父親なんだから、踏ん張れ。残された家族の前で取り乱すな。頭では分かっていた。でも、息子の名前が書かれた札を見ただけで、喉が締まって声が出ない。足元がふらついて、まるで地面がゆっくり沈むみたいだった。
私はずっと怖かった。
迷惑だと思われたらどうしよう。こんなに人を呼んだと思われたらどうしよう。SNSに書いたことを「不快」だと感じた人もいるかもしれない。式に来た人たちが気を遣うだけになったらどうしよう。
そして何より――息子がいなくなった世界が、冷たくて、静かで、誰も覚えていない場所だったらどうしよう。父親の私だけが、取り残されるんじゃないかと。
でも、その心配は、扉の向こうでいきなり裏返った。
一番最初に目が合ったのは、少年団のころのチームメイトの親御さんだった。
こちらが何も言う前に、相手が先に手を握ってくる。
「来たよ。ちゃんと来たよ」
その一言で、胸の奥の堤防が決壊した。私は言葉を返す前に、ただ頭を下げるしかなかった。
次々と人が入ってくる。小学校、中学校、高校。サッカー関係の顔が途切れない。先生、先輩、後輩、同級生、そして指導者の方々。
気がつけば、式場の外まで列が伸びていた。二百人以上――後からそう聞いた。私はその数を聞いた瞬間、驚きより先に、申し訳なさが込み上げた。
こんなに時間を使わせてしまって、と。
けれど、来た人たちは誰一人として「迷惑」なんて顔をしていなかった。
むしろ、みんな同じ目をしていた。静かで、強くて、まっすぐな目。息子に向ける敬意の目だった。
「一緒に送ろう」
「最後まで、ちゃんと」
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