金曜の終電間際。
肘が、肋骨に“グサッ”と入った。
その瞬間、私の頭に浮かんだのはただ一つ。
「もう一回やったら、社死させる。」
その日、私は残業で魂が抜けかけてた。
目はしょぼしょぼ、足は棒。コンビニの温いお茶すら持つ手が震えるレベル。
「座れた…」って思ったのも束の間。
右から、コツ。
左から、グイ。
そして三発目、肘が肋骨に当たって、息が一瞬止まった。
振り向くと、後ろに立ってるのは若い男女。
二人で座りたいのか、私の横のスペースをじわじわ確保しようとしてる。
しかも女のほうが、私に聞こえるか聞こえないかの声で言った。
「…邪魔なんだけど。」
男も小さく笑って、同じノリで肘を入れてくる。
あぁ、これか。
“譲ってください”じゃない。
“どけ”でもない。
**「痛い思いさせて、勝手に退かせる」**やつ。
涙が出そうなくらい疲れてたのに、なぜか頭は冴えていった。
越えてきたな、っていうラインが見えたから。
正直、私だって体格ある。筋肉もある。
やり返そうと思えば、もっと強い肘も入れられる。
でも、その瞬間に思った。
「殴り返したら、同じ土俵に乗る。」
だったら、こっちの勝ち方でいく。
私は深呼吸して、少しだけ背筋を伸ばして――
車内に響くくらい、はっきり、丁寧に言った。
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