「ねえ、今日のご飯…なんか微妙」
「じゃあ自分で作れば?」って言えたら、どれだけ楽だっただろう。
——22時すぎ。
正社員で働いて、残業して、頭がぼやけたまま帰宅。
エプロンをつけて台所に立つ私の背中に、ため息が落ちてくる。
昔の私は、こういう生活をしてなかった。
若い頃は、いわゆる“夜の仕事”で稼いで、自由に暮らしてた。
海外にも行けたし、好きな服も時計も、誰にも文句を言われなかった。
不自由は少なかった。少なくとも「自分」を削る必要はなかった。
でも、そろそろ結婚したいと思った。
だから、今までの恋人とは真逆のタイプを選んだ。
派手じゃない、堅実、ちゃんとしてる。
なにより——私のことが大好きだと言ってくれた人。
「愛されてるなら、大丈夫」
そう信じてしまった。
結婚して現実が始まった。
彼は平社員で、家に入れるお金は月17万円。
そこから家賃も光熱費も全部出す。
私は「金額が少ない」と言ったことは一度もない。
共働きだし、私も家にお金を入れてた。
問題はそこじゃない。
問題は、生活の“重み”が全部こちらに乗ってきたこと。
帰宅が21時でも、台所に立つのは私。
洗濯も掃除も私。
彼はソファでスマホ。
そして口だけは動く。
「これ、味濃くない?」
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