仕事終わり、エンジンの熱がまだ足に残ってる状態でマンションの駐車場に入った瞬間、心臓が一回だけドンって鳴った。
――俺の区画に、見知らぬ車が寝てた。
マジで。自分の名前が入ってる契約スペースに、何食わぬ顔でぬるっと侵入して、まるで「ここ俺んち」みたいなツラ。遠目でも分かる。あれ、絶対わざとだ。ふざけんな。
でも、こういうのは感情で殴ったら負ける。相手が一番欲しいのは、こっちがキレて何かしでかす瞬間。だから俺は深呼吸して、次にやることを決めた。
まず、証拠。
スマホを出して、車のナンバー、停め方、区画番号、地面のライン、時間が分かる画角。角度を変えて何枚も。動画も回す。万が一の「ぶつけられた」や「脅された」対策に、音声も入れておく。
それから俺は、バイクをいつもの位置じゃなく“貼る”ように停めた。
車の前方にバイクの車体を寄せ、ハンドルと車のフロントが約10センチ
。後ろも同じ、マフラーとバンパーが約10センチ。ギリギリだけど、接触はしてない。通路は塞がない。俺が降りるスペースも確保した。あくまで「合法の範囲で、勝手に出られない状況」を作る。これが大事。
次に、告知。
俺は車内から、用意しておいた簡易ボードを取り出した。
「私有駐車スペース/無断駐車禁止/違反は管理会社へ通報・必要に応じてレッカー手配」
こういうのはデカく、短く、はっきり。丁寧語で冷たく書くのが効く。怒りの文章は相手に燃料を与えるだけだ。
そして、管理会社と管理人室に連絡。
「◯番区画、無断駐車。証拠写真あります。監視カメラ確認をお願いします。規定に沿って対応してください」
言い方は淡々と。感情を混ぜない。相手の仕事を増やさない。必要な情報だけ渡す。
ここまでやって、俺は“待つ”じゃなく“固める”。
駐車場の入口、車の周囲、区画番号が映る位置で、もう一回動画を撮る。自分のバイクが接触していないのも、距離感も映るように。あとから何を言われても、映像が全部答えてくれる。
しばらくして、問題の車の持ち主が戻ってきた。
記事はまだ終了していません。次のページをクリックしてください