うちの仕事場は、某連鎖の「寄件点」みたいなところ。
毎日いろんな人が来る。優しい人もいれば、急いでる人もいる。そこまではいい。こっちは仕事で受け止める。
でもね。
世の中には「自分の機嫌を他人の給料で処理する」タイプがいる。
その日、まさにそれが来た。
若い男客。入ってくるなり目が据わってる。
まず口が先。次に態度。最後に脳みそが置いてきぼり。
「今すぐ加急に変えろ」
「時間も変えろ」
「手書きで備考を書け」
しかも全部、“お願い”じゃない。命令。
おまけにガラス越しにスマホ構えて、当衆で撮影開始。
そして、拍玻璃。ガンガン。
辱骂。威胁。言葉が汚いだけじゃなくて、空気が腐るタイプのやつ。
人が並んでる前でだよ。恥ずかしいのはこっちじゃないのに、あいつだけが恥ずかしくない顔してる。
こういう時、こっちは一瞬で悟る。
「あ、これは“理屈が通じない人”だ」って。
私は表面だけ、にっこり。
声も落ち着かせる。顔も崩さない。
店の人間が感情を出した瞬間、相手は「勝った」と思うから。
だから私は、勝たせないために、負けたフリをした。
「承知しました」
「確認します」
「こちらで対応します」
その代わり――
私はペンを握った。
相手の要求どおり、手書きで。
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