それ、迷惑ですよね?
新幹線の車内で、見知らぬ男性にそう言われた瞬間、背中がぞくっとした。
私は双子を連れて大阪から東京へ戻るところだった。畳むと余計に嵩張る双子用ベビーカーをどうするか、前日から何度も調べて、結局「特大荷物スペースつき座席」をスマートEXで予約した。追加料金も払った。ルール通りに、ちゃんと。
当日、車内は満員ではないけれど、ほどよく席が埋まっている感じ。
私は汗をかきながらベビーカーを押し、指定の場所まで辿り着いた。特大荷物スペースにぴったり収まった瞬間、心の中で小さくガッツポーズした。これで通路も塞がない。誰の邪魔にもならない。双子も機嫌がいい。
……のはずだった。
通路側から、わざとらしく大きな声が飛んできた。
「え、そこって勝手に使っていいんですか?それ、迷惑ですよね?」
振り向くと、五十代くらいの男性が腕を組んで立っていた。声が大きい。しかも周囲に聞こえるように言う。
私の心臓がドクンと鳴った。こういう時、子連れってだけで空気が変わるのを知っている。迷惑をかけたくないから、準備してきたのに。
男性は続けた。
「荷物置き場を占領してるじゃないですか。みんな困りますよね?」
その言い方に、車内の空気が一気にざわついた。
「え、予約いるんじゃないの?」
「どうなんだろう」
ひそひそ声が私の耳に刺さる。
私は一瞬、息が詰まった。
間違ってないはず。予約した。ルール通り。そう分かっているのに、責められると体が固まる。
でも次の瞬間、胸の奥で何かが燃えた。
私は迷惑をかけた側じゃない。
確認して、お金を払って、準備して、ここにいる。
双子の顔を見た。きょとんとしている。
この子たちの前で、必要以上に縮こまりたくなかった。
私はゆっくり、でもはっきり言った。
「予約しています」
男性は鼻で笑った。
「はいはい、そういうのいいから。予約してるなら証拠見せてくださいよ。みんな迷惑してるんで」
煽るような口調。周りを巻き込む言い方。
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