「指定席を取っていたのに、“自由席行ってもらえる?”と言われた。」
JRの新幹線で、ちゃんと指定席を取っていた。
チケットを見ながら自分の席に向かうと、そこには知らない親子が座っていた。
小さな子供と、その母親。
私は一瞬、席を間違えたのかと思ってチケットを見直した。
でもやっぱりここだった。
「すみません、そこ自分の席なんですが。」
そう言うと、母親は平然と答えた。
「子供がこの席気に入ってるの。」
そして当然のように続けた。
「自由席行ってもらえる?」
一瞬、何を言われたのか分からなかった。
私はもう一度言った。
「いや、ここ指定席なんですけど。」
すると母親は少し不機嫌そうな顔になり、
「大人なんだから譲れるでしょ?」
さらにこう言った。
「子供優先ですよ?」
その瞬間、子供の肩を軽く叩きながら言った。
「この人が席譲ってくれないんだって。」
すると子供が泣き出した。
どう見ても、わざと泣かせた感じだった。
母親はそれを見て、わざとらしく言った。
「ほら、泣いちゃったじゃない。」
でも席は一切立とうとしない。
カバンをゆっくり持ち上げ、
コートを畳み直し、
荷物をまた置き直す。
明らかに時間を稼いでいる。
その間、後ろの席から声が飛んできた。
「子供泣いてるんだから譲れよ。」
別の人も言った。
「大人気ないな。」
さっきまで静かだった車内が、
一瞬で私が悪い空気になった。
私は少しだけ黙った。
そして振り返って、その人たちに言った。
「そんなに気になるなら、あなたが譲ればいいでしょ。」
一瞬で、空気が止まった。
さっきまで文句を言っていた人たちが、
誰も何も言わなくなった。
そのタイミングで私は車内ボタンを押した。
「乗務員呼びます。」
母親は少し焦った顔をした。
「そんな大げさな…」
数分後、車掌がやってきた。
事情を説明すると、すぐにチケット確認になった。
まず私の指定席チケット。
次に親子のチケット。
車掌は少し眉を動かして言った。
「……こちら、自由席のチケットですね。」
車内が静まり返った。
母親は何か言いかけた。
「でも子供が…」
車掌ははっきり言った。
「指定席は、指定券をお持ちの方の席です。」
「申し訳ありませんが、移動してください。」
さっきまで泣いていた子供も、
いつの間にか泣き止んでいた。
母親は何も言えなくなり、
荷物をまとめて立ち上がった。
そしてそのまま自由席の方へ歩いていった。
車掌は私に軽く頭を下げた。
「お待たせしました。」
私はようやく自分の席に座った。
さっきまで文句を言っていた人たちは、
今は誰もこちらを見ようともしない。
その時、隣の席の男性が小さく言った。
「……指定席は指定席ですからね。」
私は心の中で思った。
たかが指定席。されど指定席。
譲るかどうかは善意の問題だ。
でも、
奪うのはルール違反だ。
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