初めての出産から一か月ほど経った頃の話です。
寝不足でフラフラになりながら育児をしていたある日、市の訪問指導で男性保健師が家に来ました。
体重測定や育児相談が終わった頃です。
突然その保健師が言いました。
「では授乳の様子を見せてください」
私は少し戸惑いました。
でも初めての子育てです。
専門家が言うなら必要なんだろうと思いました。
ところが授乳を始めても、保健師は赤ちゃんではなく私ばかり見ている気がしたんです。
しかも何もメモを取らない。
指導もない。
私は違和感を覚えました。
そこで聞きました。
「赤ちゃんの何を確認しているんですか?」
すると保健師は少し慌てた様子で、
「いや、全体的にですね」
と曖昧な返事。
私はさらに聞きました。
「授乳確認って必須なんですか?」
保健師
「みなさんやっています」
私
「市の決まりですか?」
保健師
「えっと……」
急に歯切れが悪くなりました。
私はその場で市役所に電話しました。
スピーカーにして事情を説明すると、
担当者がはっきり言ったのです。
「授乳を見せる義務はありません」
部屋の空気が凍りました。
保健師の顔色が変わったのが分かりました。
担当者はさらに続けました。
「その場で上司に代わりますので、お名前を確認させてください」
私は保健師の名札を読み上げました。
保健師は慌てて、
「誤解です!」
「私はただ確認を……」
と言い始めました。
でもさっきまでの余裕はありません。
翌日。
市役所の責任者が自宅まで謝罪に来ました。
そして担当変更。
後日聞いた話では、私以外からも同じような相談が出ていたそうです。
私はあの日学びました。
専門家だから正しいとは限らない。
一番信用しなければならないのは、
自分が感じた違和感なのだと。
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