アジの干物を食べた直後、全身にじんましんが出て、ゼーゼーと苦しそうな呼吸をしている子どもを見たら、多くの親は「魚アレルギーかもしれない」と考えるでしょう。
実際、小児科外来にもそんな相談が寄せられます。
ある日、一人のお母さんが慌てた様子で診察室に入ってきました。
「アジの干物食べさせたら蕁麻疹とゼーゼーが出て魚もアレルギーで食べさせられないのかな?」
確かに症状だけを見ると魚アレルギーそのものです。
しかし医師はすぐに別の角度から確認しました。
⚕️「今まで魚は食べさせたことある?」
するとお母さんは少し考えてから答えました。
「あります。アジもあります。何なら今までいっぱい食べた時もそんな症状出なかったです。干物もできたての2日前に食べた時も大丈夫でした。」
ここで医師は大きな違和感を覚えます。
もし本当に魚アレルギーなら、過去に何度も食べていてまったく症状が出なかったという話と少し矛盾します。
もちろん絶対ではありませんが、別の原因も考える必要があります。
そこで医師はこう説明しました。
⚕️「それはアジのアレルギーの可能性低そう。おそらくヒスタミン中毒やなぁ。赤身魚に多いけど、常温放置すると時間経過につれてヒスタミン増えて症状でやすくなるやで。魚新鮮なうちに食べてや。除去対応は不要やで。」
実はヒスタミン中毒は、魚アレルギーと非常によく似た症状を引き起こします。
じんましん。
顔の赤み。
かゆみ。
頭痛。
そしてゼーゼーするような呼吸症状。
見た目だけでは専門家でも慎重な判断が必要になるほどです。
特にアジ、サバ、イワシ、カツオ、マグロなどの青魚や赤身魚で起こりやすいとされています。
魚の鮮度が落ちたり、常温で長く放置されたりすると、魚の中でヒスタミンという物質が増えていきます。
厄介なのは、このヒスタミンが加熱してもほとんど壊れないことです。
しっかり焼いたから大丈夫。
煮たから安全。
そうとは限らないのです。
お母さんは少し安心した表情を見せましたが、まだ困ったことが残っていました。
「保育園が給食管理対応の紙書いてくれと煩くて〜」
保育園としては万が一を防ぐために慎重になるのは当然です。
しかし、アレルギーとヒスタミン中毒は全く別のものです。
魚そのものが食べられないわけではありません。
そのため、必要以上の除去食や過度な制限はかえって子どもの食生活に影響する場合もあります。
最近は食物アレルギーへの理解が広がった一方で、「症状が出た=すべてアレルギー」と考えてしまうケースも少なくありません。
ですが、同じじんましんでも原因はさまざまです。
だからこそ自己判断せず、専門医の診察を受けることが大切なのです。
見た目は同じでも原因はまったく違う。
それが医療の難しいところであり、面白いところでもあります。
皆さんは「ヒスタミン中毒」を知っていましたか?
魚を食べた後に症状が出たからといって、必ずしも魚アレルギーとは限らないのです。
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