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5 年前に亡くなった父さんから、 僕の 20 歳の誕生日にビデオレターが届いた。
2026/06/03

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20歳の誕生日の夜。

母から一つのUSBメモリを渡された。

「お父さんからよ」

その言葉を聞いた瞬間、胸が締め付けられた。

父は5年前に亡くなっている。

病気だった。

僕が15歳の時だ。

それ以来、父のいない人生を歩いてきた。

母は女手ひとつで僕を育ててくれた。

だから「父からのプレゼント」なんて、想像もしていなかった。

部屋に戻り、震える手で動画を再生した。

画面が映る。

そこには父がいた。

痩せていた。

頬はこけ、顔色も悪い。

それでも父は笑っていた。

「よう。20歳おめでとう」

懐かしい声だった。

たった一言で涙があふれた。

「ちゃんと大人になったか?」

「母さんに迷惑かけてないか?」

「好きな人はできたか?」

父は昔と変わらない口調で話していた。

途中で咳き込みながらも、最後まで笑顔だった。

「父さんはお前の20歳を見ることはできない」

「でもな、お前なら大丈夫だ」

「母さんを頼むぞ」

動画が終わる頃には、僕は泣き崩れていた。

父は最期まで父親だった。

そう思った。

だけど、その夜。

何度も動画を見返しているうちに、ある違和感に気付いた。

画面右上の時計だった。

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そこにははっきりと表示されていた。

『令和8年』

今年だった。

僕は固まった。

父は5年前に亡くなっている。

なのに、なぜ今年の日付が映っているのか。

最初は時計の設定ミスだと思った。

でも何度見ても同じだった。

翌日、母に見せた。

母は一瞬だけ顔色を変えた。

けれど何も言わなかった。

その反応が逆に気になった。

僕は動画のデータを確認した。

作成日時。

令和8年。

つまり今年。

しかも数週間前。

頭の中が真っ白になった。

父は亡くなっている。

なら誰が撮った。

なぜ父が映っている。

なぜ今年作成されている。

答えが見つからなかった。

その日から僕は調べ始めた。

そして数日後。

母のパソコンを開いてしまった。

最低だと思った。

でも知りたかった。

そこで僕は一つのフォルダを見つける。

名前は、

『20歳の誕生日』

だった。

嫌な予感がした。

中を開く。

そこには父の写真が大量に保存されていた。

動画。

音声。

録音データ。

そしてAI生成ソフト。

僕の呼吸が止まった。

さらに奥にテキストファイルがあった。

開いた瞬間、目が離せなくなった。

そこには母の日記が残されていた。

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『今年で20歳になる』

『あの人との約束の日が近い』

『本当はビデオレターなんて残っていない』

僕は思わず息を呑んだ。

画面を読み進める。

『病気が進んでいたから撮影する余裕もなかった』

『でも、あの子はずっと父親の言葉を待っている気がした』

『だから私が作ることにした』

『何度失敗してもいい』

『あの人なら何て言うだろう』

『あの人ならどんな顔で笑うだろう』

『あの人なら20歳の息子に何を伝えるだろう』

文字が滲んだ。

母は何年もかけて、この動画を作っていた。

父になろうとしていた。

その時だった。

背後で扉が開く音がした。

振り返ると母が立っていた。

僕は何も言えなかった。

ただ涙だけが溢れてきた。

「なんで……」

やっとそれだけを口にした。

母は少し困ったように笑った。

「だって、お父さんは見られなかったでしょう?」

「あなたの20歳を」

「だから見せてあげたかったの」

母は静かに椅子へ座った。

「ずっと考えてたのよ」

「あの人なら何て言うかなって」

「きっと褒めるだろうな、とか」

「きっと心配するだろうな、とか」

「きっと最後は母さんを頼むぞって言うだろうな、とか」

そう言いながら笑った。

でも目には涙が浮かんでいた。

その瞬間、僕は気付いた。

小学校の運動会。

中学の入学式。

高校受験の日。

卒業式。

父がいるはずだった場所には、いつも母がいた。

仕事をしながら。

家事をしながら。

自分だって苦しいはずなのに。

父の分まで怒って。

父の分まで褒めて。

父の分まで心配して。

父の分まで愛してくれた。

僕はずっと父がいないと思っていた。

違った。

父の役まで背負っていた人がいた。

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僕はもう一度動画を再生した。

画面の中で父が笑っている。

「20歳おめでとう」

だけど今の僕には分かる。

この言葉を本当に届けたかったのは父だけじゃない。

5年間。

父の代わりを誰にも気付かれないように続けてきた母だった。

僕は涙を拭きながら母を見た。

そして初めて言った。

「ありがとう」

母は少し驚いた顔をした。

それから泣きながら笑った。

「どういたしまして」

その笑顔を見た時、僕はようやく理解した。

父は5年前に亡くなった。

だけど僕は一度も父を失っていなかった。

ずっと隣にいたのだから。

母という形になって。

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