その日は仕事帰りに近所のスーパーへ寄った。
買ったのは夕飯用の食材だけ。
枝豆500g。
なすび。
油揚げ。
どれも特売品で、合計しても千円に届くかどうかというレベルだった。
レジも混んでいたので、私は会計を済ませるとそのまま袋を持って帰宅した。
異変に気付いたのは夜だった。
何となく家計簿を付けようと思い、レシートを広げた。
すると目が止まった。
枝豆299円。
なすび158円。
油揚げ185円。
ここまでは普通だった。
しかしその下に、意味不明な数字が並んでいた。
185,178円 1点。
私は三回見直した。
さらに合計欄を見る。
206,445円。
思わず声が出た。
「はぁ!?」
家族も飛んできた。
「どうした?」
「いや、私スーパーで20万円使ったらしい。」
家族も最初は意味が分からなかった。
そしてレシートを見た瞬間、大爆笑。
「枝豆が高級ブランドになってるじゃん!」
「なすびがローン対象商品かよ!」
その場は笑い話になった。
せっかくだからと私はレシートの写真を撮り、地元のSNSグループに投稿した。
「誰か教えてください。枝豆を買ったつもりが20万円請求されてます。
」
すると翌朝。
通知が止まらなかった。
「過去一笑った」
「何を買ったらスーパーで20万円になるんだ」
「これ保存したい」
地元ではちょっとした話題になった。
買い物へ行くと、
「レシートの人ですよね?」
と声を掛けられる。
職場でも、
「20万円の枝豆食べた?」
といじられる。
完全に町内の有名人になってしまった。
その日の午後。
スーパー本部から電話がかかってきた。
担当者は何度も謝罪しながら説明した。
どうやら高額商品の登録作業中にシステムエラーが発生し、本来別の商品だった18万5178円というデータが誤って会計情報に紐付いてしまったらしい。
もちろん実際には決済されておらず、すぐに修正対応が行われた。
そして数日後。
店長が直接謝罪に来た。
「ご迷惑をおかけしました。」
そう言って差し出されたのは、かなりの額の商品券だった。
私は恐縮しながら受け取ったが、正直ちょっと嬉しかった。
だって買ったのは枝豆となすびと油揚げだ。
それなのにスーパー本部が動き、店長が謝罪に来て、商品券まで貰うことになるなんて誰が想像するだろう。
今でもそのレシートの写真はスマホに残っている。
見るたびに思う。
人生で一番高かった買い物は車でも家でもない。
あの日の枝豆だった。
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