席に座って、すぐ注文した。
タブレットで操作して、
ちゃんと「注文完了」も確認した。
だから、待っていた。
5分。
10分。
(混んでるのかな)
でも。
15分を過ぎたあたりから、
明らかにおかしくなった。
隣の席。
後から来た人のラーメンが運ばれる。
その隣も。
さらにその隣も。
——私だけ、来ない。
「お願いしまーす」
声をかける。
……通り過ぎる。
もう一度。
「すみませーん」
一瞬、目が合った。
でも止まらない。
そのまま別の客の前へ。
注文を取り始める。
(なんで私、飛ばされてるの?)
気づけば、4組。
私より後の客が、
全員先に進んでいた。
20分。
さすがに、限界だった。
タブレットの「呼び出し」。
指を置いて、押した。
——数分後。
店員が来た。
少し面倒そうな顔で。
「ご注文はお決まりですか?」
……は?
「もう注文してるんですけど」
少し強めに言う。
店員は画面を見て、ため息みたいに言った。
「こちら、機械で注文する形になってますので」
——いや。
「だから、もう注文してます」
空気がピリッとする。
店員はもう一度確認して、
やっと表情が変わった。
「あ……」
画面を見直す。
沈黙。
(やっと気づいた)
でも。
次に出た言葉は、
「少々お待ちください」
だけだった。
——それだけ?
私ははっきり言った。
「20分待ってるんですけど」
その瞬間、店員の態度が変わった。
「あ、申し訳ございません」
急に声が柔らかくなる。
でも、遅い。
「どれくらいで出ますか?」
「今からお作りしますので…10分ほど…」
——合計30分。
私はそのまま言った。
「じゃあ、いいです。返金してください」
一瞬、空気が止まる。
さっきまでの余裕が消えた。
「え、あの……少々お待ちください!」
明らかに焦って、
奥へ走っていく。
(さっきと全然違うじゃん)
数十秒後。
店長と一緒に戻ってきた。
「大変申し訳ございませんでした」
深く頭を下げる。
さっきの店員も、並んで頭を下げる。
「今回のお代はいただきませんので、どうか…」
——無料。
でも。
私は首を振った。
「結構です」
「いえ、せめて…」
「いいです」
はっきり言った。
「もう食べる気分じゃないので」
そのまま、出口へ向かった。
誰も止めなかった。
外に出て、やっと息を吐いた。
(なんでこんなに疲れてるんだろう)
ただラーメン食べたかっただけなのに。
——でも。
最後に、ひとつだけ思った。
無料でも、
謝罪でも、
取り戻せないものがある。
それは、
“あの20分”。
そして、
“無視されていた感覚”。
だから私は決めた。
もう行かない。
たぶんそれが、
一番の反撃だと思う。
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