結婚5年目。
妻が、突然こう言った。
「ごめん。
私、看護師じゃない」
「……は?」
うちは共働きだった。
妻はずっと
“総合病院勤務の看護師”
という設定だった。
夜勤もあるって言ってた。
白衣も持ってた。
だから、
1ミリも疑わなかった。
でもその日。
息子が熱を出した。
私は慌てて聞いた。
「解熱剤どれくらい飲ませる?」
すると妻が固まった。
「……わかんない」
「え?」
「私、医療のこと詳しくない」
空気が止まった。
「いや、看護師だよな?」
妻は、泣きそうな顔で言った。
「違うの」
私は、
妻のクローゼットを開けた。
ナース服。
名札。
聴診器。
全部あった。
でも、
よく見ると変だった。
病院名がない。
「これ、どこで…」
「通販」
頭が真っ白になった。
「じゃあ夜勤って?」
「コンビニ」
「病院は?」
「働いたことない」
私は笑った。
笑うしかなかった。
「5年間ずっと?」
「……うん」
「なんで?」
妻は震えながら言った。
「看護師って言った方が、
ちゃんとして見えるから」
翌日。
私は義姉に電話した。
すると義姉は普通に言った。
「あー、またやったんだ」
「……また?」
「前の彼氏には
保育士って言ってたよ」
私は、言葉を失った。
帰宅後、
私は妻に聞いた。
「他にも嘘ある?」
妻は黙った。
「貯金は?」
「ない」
「奨学金返済中って話は?」
「それも嘘」
私は、
急に怖くなった。
“この人の本当”が
何一つ分からなかった。
妻は泣きながら言った。
「嫌われたくなかったの!」
でも私は、
その言葉が一番苦しかった。
“嫌われたくないから嘘をつく”
それって、
相手を信じてない人の発想なんだよ。
離婚届を書いた日。
妻は最後まで言ってた。
「資格くらいで離婚するの?」
違う。
問題は資格じゃない。
“人生そのものを演じてたこと”
それが無理だった。
好きになった相手が、
最初から存在しなかった感覚。
あれは本当にキツい。
学んだことがある。
①肩書きで自分を盛る人は
他でも盛る
②“小さな嘘”は
必ず大きくなる
③信頼は
一回壊れると戻らない
今でも思う。
本当の自分で嫌われるより、
偽物で愛される方が
ずっと虚しい。
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