「飛行機で、隣の人が裸足を私の座席ポケットの方まで伸ばしてきた。」
離陸して20分くらい。
シートベルトサインも消え、
機内はようやく落ち着いた空気になっていた。
私は窓側の席。
隣には外国人の女性が座っていた。
最初は普通だった。
でも隣でゴソゴソ音がして、
彼女が靴を脱いだ。
まあ、長時間フライトなら
靴を緩める人もいる。
そこまではいい。
問題はその次だった。
彼女はスマホを見ながら足を伸ばし――
裸足が私の座席ポケットのところまで来た。
……え?
しかも数秒後、気づいた。
匂い。
しかもかなり強い。
私は少し体をずらして、
できるだけ穏やかに言った。
「すみません、足ちょっと…」
女性はちらっとこちらを見た。
でも――
何も言わない。
そしてスマホに視線を戻した。
聞こえていないのかと思って、
もう一度言った。
「すみません、足…私の席の方に来てるんですけど。」
女性は眉をひそめて言った。
“I don’t understand.”
(わかりません。)
……ああ、そういう感じね。
私はそれ以上言わなかった。
その代わり、反対側の席に座っていた友人に小声で言った。
「やば…足めっちゃ臭くない?」
友人が一瞬固まる。
そして小さく笑いながら言った。
「え、ほんとだ。やばいそれ。」
思ったより声が出てしまった。
前の席の人が振り向く。
通路側の人もちらっとこちらを見る。
でも隣の女性は――
まだ足を引っ込めない。
完全に知らないふり。
私はもう一度友人に言った。
今度は少し大きめの声で。
「いやこれほんと臭い。」
すると友人が言った。
「え、足の匂いだよね?」
その瞬間。
隣の女性が突然こちらを見て、
日本語で言った。
「そんなに大げさに言わなくてもいいじゃないですか。」
……は?
私は一瞬固まった。
さっきまで
“I don’t understand.”
って言ってたよね?
私は思わず言った。
「日本語わかるんですね。」
女性は少し気まずそうな顔をした。
その時だった。
前の席の女性が振り向いて言った。
「すみません、それちょっと…」
通路側の男性も言った。
「靴履いた方がいいと思いますよ。」
気づけば、
周りの人がみんな見ていた。
女性の顔が一瞬で変わった。
さっきまでの余裕は消えていた。
数秒後。
彼女は黙って足を引っ込め、
靴下を履き、靴を履いた。
そのあと、
一言も話さなかった。
友人が小さく笑った。
「日本語わからないんじゃなかったの?」
私は肩をすくめた。
飛行機の席は狭い。
でも――
常識まで置いてくる必要はない。
そして思った。
聞こえないふりはできても、
周りの視線までは無視できないらしい。
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