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「駐禁とらないで下さい」路上に停めた車のフロントガラスに置かれていた手書きメモ。“パーキングが上がって動かせません、朝中に対応します”と書かれていたが、1時間300円を入れれば済む話では…?私が時刻とメモを写真に残した直後、巡回中の人がその車の前で足を止めた。
2026/07/06

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最初にその車を見た時、ただの路上駐車だと思った。

銀色のコンパクトカー。

都内のビル街の端に、いつものように停まっていた。

そのあたりは、仕事の車も多い。

配達、営業、来客、工事関係。

短時間だけ停める車は珍しくない。

でも、その車だけは少し違っていた。

フロントガラスの下に、手書きの紙が挟まれていた。

近づいて見ると、こう書かれていた。

「バッテリー上がってしまって動かせません」

「今日中に対応します」

「駐禁とらないでください」

私はその場で足を止めた。

バッテリー上がり。

それなら確かに、すぐ動かせないこともある。

急に車が動かなくなれば、誰でも焦る。

JAFを呼ぶか、知り合いに助けを頼むか、業者を手配するか。

事情は分かる。

でも、なぜかその紙には、妙な引っかかりがあった。

「駐禁とらないでください」

その一文が、やけに都合よく見えた。

本当に困っているなら、警察か管理先に連絡する。

ロードサービスを呼ぶ。

ハザードを出す。

車内か外から見える形で連絡先を置く。

でもその車には、連絡先らしいものは見えなかった。

ただ、お願いだけが置かれていた。

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しかも、その場所は時間制限のある駐車枠だった。

1時間ごとに300円。

つまり、きちんとお金を入れれば、一定時間は停められる。

逆に言えば、入れなければ取り締まり対象になる。

私は少し離れて、その車を見ていた。

車は斜めでもない。

事故を起こした様子もない。

タイヤがパンクしているようにも見えない。

ボンネットが開いているわけでもない。

ただ、普通に停まっている。

紙だけが、妙に大げさだった。

その時、近くの人が小さく言った。

「あれ、朝からありますよ」

私は思わず聞き返した。

「朝から?」

「はい。少なくとも午前中からずっと」

時計を見ると、もう昼を過ぎていた。

今日中に対応します。

そう書いてある。

でも、何時間もそのまま。

その間、誰かが来た気配はない。

私はスマホを出した。

車の全体。

紙の内容。

駐車位置。

周囲の標識。

駐車枠の表示。

必要以上に近づかず、状況が分かるように写真を撮った。

もちろん、車には触らない。

紙を動かすこともしない。

勝手に何かを貼ることもしない。

ただ、見たままを残した。

しばらくして、さらに妙なことが起きた。

一人の男性が近づいてきた。

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車の持ち主らしき人だった。

私は少し離れた場所から見ていた。

男性は車に乗り込むのかと思った。

しかし違った。

車を動かす様子はない。

ボンネットも開けない。

誰かに電話する様子もない。

ただ、駐車機の近くへ行き、料金を入れた。

そして、何事もなかったようにその場を離れた。

私は固まった。

え。

動かせないんじゃなかったのか。

バッテリーが上がっているなら、もちろん車は動かない。

それは分かる。

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