最初は、ただの偶然だと思っていた。
大阪府内の住宅街にある、いつもの公園。
夕方になると、子どもたちが集まってくる。
自転車を止めて、ランドセルを背負ったまま走ってくる子。
砂場で遊ぶ子。
ブランコに並ぶ子。
その光景は、どこにでもある普通の夕方だった。
でも、ある日から少しずつ空気が変わった。
公園のベンチに、同じ親子が長い時間座るようになった。
それだけなら何の問題もない。
公園は誰でも使える場所だ。
けれど問題は、そこからだった。
ベンチだけではなく、ブランコの近くにも荷物を置く。
遊具の周りに長く居座る。
子どもたちが近づいても、場所を空けようとしない。
小さな子がブランコを見つめたまま、母親の服を引っ張っていた。
「使いたい」
そう言いたそうな顔だった。
でも、その母親は困ったように周囲を見て、結局その子を連れて離れていった。
私はその光景を見て、胸の奥がざらついた。
誰かを追い出したいわけじゃない。
でも、公園は一部の人だけの場所じゃない。
みんなで使う場所だ。
数日後、近所の人からも同じ話を聞いた。
「あの場所、最近ずっと使えないんですよ」
「子どもが怖がって近づかなくなった」
「注意した人もいたけど、あまり変わらなかったみたい」
さらに気になったのは、自動販売機の近くだった。
誰かが飲み物を買うたびに、釣り銭口のあたりを確認しに行く子がいた。
もちろん、子どもが悪意を持っているとは限らない。
ただ、落ちているお金や取り忘れた釣り銭を探しているように見える行動が、何度も続いていた。
見ている側は不安になる。
親は近くにいる。
でも止めない。
私はその時、初めてスマホを出した。
顔は撮らない。
近づきすぎない。
揉めるようなこともしない。
ただ、公園の状況だけを記録した。
ベンチの使われ方。
ブランコの周囲に置かれた荷物。
子どもたちが遊べずに離れていく様子。
自動販売機の周辺で繰り返される行動。
時間もメモした。
月曜日、16時20分。
火曜日、17時前。
水曜日、同じ場所。
木曜日もまた同じ。
一日だけなら、たまたまだ。
でも、何日も続けば話は変わる。
私は市の窓口に連絡した。
最初の返事は、想像通りだった。
「公園は公共の場所ですので、利用そのものを制限するのは難しいです」
分かっている。
私も、誰かに使うなと言いたいわけじゃない。
だから私は言った。
「使うなと言っているんじゃありません。長時間占用して、他の子どもが遊べない状態を放置していいのか聞いています」
電話の向こうが少し静かになった。
それでも返ってきた言葉は、
「一度確認します」
だった。
確認。
その言葉を、私は何度も聞いた。
でも、現場は変わらなかった。
翌日も同じ。
その次の日も同じ。
子どもたちはブランコの前で止まり、諦めて帰っていく。
記事はまだ終了していません。次のページをクリックしてください