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「カエルがうるさいから田んぼ側で対策しろ?」あとから来た住民の苦情文に絶句…私は泥だらけの紙を拾って保存した
2026/07/01

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朝、田んぼの様子を見に行った時だった。

昨夜の雨で、あぜ道は少しぬかるんでいた。

水面には薄く空が映り、苗の間を風が渡っていく。

私は長靴の泥を気にしながら、いつものように水位を確認していた。

すると、足元に白い紙が落ちているのに気づいた。

最初は、風で飛んできたチラシかと思った。

でも、近づいて拾い上げた瞬間、妙に胸がざわついた。

紙には、こう書かれていた。

「田んぼの持ち主様へ」

私宛てだった。

その時点で、嫌な予感がした。

農地に関する苦情か。

草刈りか。

水路か。

それとも車の出入りか。

私は少し身構えながら続きを読んだ。

「カエルの鳴き声による騒音に毎年悩まされています」

一瞬、意味が入ってこなかった。

カエル。

鳴き声。

騒音。

私は紙を持ったまま、田んぼを見た。

確かに、夜になると鳴く。

それは鳴く。

この季節の田んぼでカエルが鳴くのは、もう風物詩みたいなものだ。

子どもの頃から聞いてきた音だった。

梅雨前の湿った夜。

遠くの田んぼから響く声。

それを聞くと、ああ今年もそんな季節かと思う。

しかし、この紙の主にとっては違ったらしい。

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「鳴き声が煩くて眠ることができず非常に苦痛です」

文字は丁寧だった。

怒鳴り散らすような文面ではない。

でも、内容はなかなか強かった。

眠れない。

非常に苦痛。

騒音対策をお願いします。

私は思わずつぶやいた。

「……カエルに?」

田んぼの真ん中で、私は紙を見つめたまま固まった。

騒音対策。

何をすればいいのか。

カエルに注意するのか。

夜十時以降は合唱禁止と書いた看板を立てるのか。

「近隣住民より」の最後の一文が、やけに重く見えた。

私は笑いそうになった。

でも、完全には笑えなかった。

書いた人は本気なのだ。

毎年悩まされていると書いてある。

眠れないほど苦痛だと書いてある。

その人にとっては冗談ではない。

ただ、こちらからすると、どうにも現実感が薄い。

田んぼをやっている以上、水を張る。

水を張れば虫も来る。

虫が来ればカエルも来る。

カエルが来れば鳴く。

それは自然の流れだ。

私が夜中にカエルを集めて指揮棒を振っているわけではない。

合唱団を雇っているわけでもない。

「本日の演目、カエルによる大合唱です」

そんなつもりは一切ない。

私は紙を持って家へ戻った。

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台所で妻に見せた。

妻は最初、普通の苦情だと思って読んでいた。

途中で眉が動いた。

そして最後まで読んで、しばらく黙った。

「……カエル?」

「うん」

「うちの?」

「たぶん、うちの田んぼにいるカエル」

妻は困ったように笑った。

「それはまた、難易度高いね」

本当に高い。

草なら刈れる。

水路なら掃除できる。

農機の音なら時間を調整できる。

でも、カエルだ。

相手は自然界の住民である。

こちらの勤務表に従ってはくれない。

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