「同じ8000円を払っておりますので、“私だけ機内食なし”の理由を、ちゃんと説明していただけますか?」
ファーストクラスの機内で、
そう言った瞬間、
周囲の空気が静まり返った。
CAさんの笑顔が、
ほんの少しだけ固まったのを私は見逃さなかった。
でも私は、
飛行機に詳しくない普通のおばさんじゃない。
確かに今は、
10年間専業主婦をしている50代だ。
スーパーの特売を見て、
電気代を気にして、
息子に「無理しなくていいよ」と言う、
どこにでもいる主婦。
でもその前は、
航空会社でCAをしていた。
だから私は、
すぐ分かった。
――あ、この説明、
“納得させるため”じゃなく、
“その場を流すため”の説明だなって。
今回、
久しぶりに羽田からANA国内線に乗った。
帰省の帰りだった。
すると息子が、
スマホを見ながら言った。
「今日空いてるらしいし、
アップグレードする?」
「たまには贅沢しなよ」
そう言って、
8000円払って
ファーストクラスへ変更してくれた。
私は正直、
かなり嬉しかった。
CAを辞めてから、
もう何年も経つ。
昔は“働く側”だった場所に、
今日は“お客様”として乗る。
それが少し不思議で、
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