離婚して三年になる元夫から、久しぶりにLINEが届いた。
最初は子どものことかと思った。
学校で何かあったのか、あるいは面会の相談か。
そんなことを考えながらメッセージを開いた私は、思わず二度見した。
「真央って今母子家庭手当もらってないよね??」
「それもらってない分俺がもらうこと出来ない?」
意味が分からなかった。
さらに読み進めると、
「おかんが倒れて入院になった」
「保険も何も入ってないからその分生活苦しくて」
「だから真央がもらってない分の母子家庭手当欲しいんやけどどうしたらいい?」
と続いていた。
私はしばらくスマホを見つめたまま固まった。
母子家庭手当。
名前の通り、母子家庭で子どもを育てている親を支援する制度だ。
離婚した男性が生活に困ったから受け取れるお金ではない。
ましてや元夫は子どもを引き取っていない。
親権もない。
毎日の食事も、学用品も、病院代も、習い事も、一切負担していない。
それなのに、なぜ自分が受け取れると思ったのか。
私は思わず笑ってしまった。
笑うしかなかった。
子どもが熱を出した時も。
夜泣きで眠れなかった時も。
入学準備でお金が飛んでいった時も。
そこに元夫はいなかった。
養育費だって何度も遅れた。
連絡しても既読無視。
そのくせ、自分が困った途端に制度のお金を分けてほしいと言い出す。
都合が良すぎる。
私は返信した。
「母子家庭手当って、子どもを育てている人のための制度だよ。」
すると元夫は、
「いや、でも真央がもらってない分あるやろ?」
と言ってきた。
どうやら本気らしい。
私はさらに聞いた。
「じゃあ聞くけど、子ども引き取るの?」
既読。
しかし返信はない。
「学校の送り迎えできるの?」
既読。
返信なし。
「病院連れて行ける?」
既読。
返信なし。
「今まで払ってない養育費はどうするの?」
そこでようやく返信が止まった。
当たり前だ。
欲しいのは子どもではない。
お金だけなのだから。
数時間後、元夫から一言だけメッセージが届いた。
「そんな言い方せんでもええやん」
私は思わずため息をついた。
そんな言い方?
子どもを育てる責任から逃げ続けてきた人間が、
子どものための制度のお金だけ欲しいと言い出す。
その発想の方がよほど酷い。
母子家庭手当は宝くじでも臨時収入でもない。
毎日必死に子どもを育てている親子を支えるための制度だ。
親としての責任は負いたくない。
でも支援金は欲しい。
そんな都合のいい話が通るなら、誰も苦労しない。
私は最後にスマホを閉じながら思った。
元夫が本当に欲しかったのは母子家庭手当じゃない。
困った時だけ差し出される、誰かのお金だったのだ。
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