「祖母の畑の石で、3000万円稼いだ。」
そう言うと、ほとんどの人は冗談だと思う。
でも、本当の話だ。
2年前、私は会社を辞めて地元の岩手の小さな村に戻った。
祖母が一生かけて守ってきた畑を受け継ぐためだった。
ただ、その畑には問題があった。
石が多すぎた。
作物を植える前に、まず石をどかさなければならない。
毎日スコップで石を掘り出していた。
その時、ふと思った。
「この石、売れるんじゃないか?」
形のきれいな石が多かった。
丸い石、平たい石、模様のある石。
試しにネットショップを作り、
「天然ガーデンストーン」という名前で販売してみた。
すると――
注文が殺到した。
庭づくりやDIYをしている人たちから次々と注文が入った。
最初は数千円の売上だった。
それが気づけば何十万、何百万。
そして気がついた頃には、
売上は3000万円を超えていた。
その話は、すぐ村中に広まった。
そして数日後、区長が畑にやって来た。
腕を組んで、畑を見回しながら言った。
「お前、石で3000万儲けたって本当か。」
私は正直に答えた。
「はい。でも全部この畑から出た石です。」
区長は鼻で笑った。
「畑の石って言うけどな。」
「この村の土地から出た石だろ。」
そして少し声を落として言った。
「村でそんなに儲けたんだから、村に寄付するのが筋だ。」
私は首をかしげた。
「いや……自分の土地なんですが。」
すると区長の目が細くなった。
「村で暮らしていくなら、村との付き合いも大事だぞ。」
「分かるよな?」
その言い方は、明らかに圧力だった。
その後、村の人たちの態度も変わった。
今まで挨拶していた人が、急に聞いてくる。
「石っていくらで売れるんだ?」
「まだ畑に残ってるのか?」
「3000万も儲けたなら、少しくらい村に回してもいいんじゃないか?」
笑いながら言う人もいたが、
目は完全に金の話だった。
数日後、また区長が来た。
今度ははっきり言った。
「村で話が出てる。」
「儲けた金、村に寄付してもらえないかってな。」
私ははっきり答えた。
「それはできません。」
すると区長は少し黙り、こう言った。
「そうか。」
「まあ……それならそれでいい。」
そう言って帰っていった。
だが、その言い方が妙に気になった。
そして翌朝。
畑に行くと、
人が集まっていた。
区長と、村の男たち5〜6人。
そして全員、スコップを持っていた。
一人が言った。
「この石だろ?」
そう言って、畑を掘り始めた。
別の男が笑いながら言った。
「石なんていくらでもあるだろ。」
「数個持っていくくらいで警察なんて呼ばないだろ?」
完全に見て見ぬふりをするつもりだった。
私は区長を見た。
区長は少し離れた場所で腕を組み、
黙って見ていた。
止める気は、まったくなかった。
むしろ――
黙認している顔だった。
私は一度だけ言った。
「それ、やめてください。」
すると一人が笑った。
「なんだ?」
「村の人間を警察に通報するのか?」
周りの男たちも笑った。
その瞬間、私はスマホを取り出した。
そして言った。
「はい。今します。」
その場で警察に通報した。
20分ほどして、パトカーが来た。
警察が状況を確認すると、空気が変わった。
さっきまで強気だった男たちは急に黙った。
私ははっきり言った。
「ここは私の土地です。」
「勝手に掘って石を持っていくのは窃盗です。」
警察官も厳しい口調で言った。
「これは不法侵入になります。
」
区長は初めて口を開いた。
「そんな大げさな……」
しかし警察は淡々と事情を聞き始めた。
そして数日後。
区長が、今度は一人で家に来た。
前とは別人のように静かだった。
しばらく黙ったあと、
小さく頭を下げた。
「……すまなかった。」
さらに言った。
「石は全部戻す。」
村の人たちも、それ以上何も言わなくなった。
私はその時、はっきり思った。
田舎ではよく言われる。
「村のために。」
でも――
自分の土地のものは、自分のものだ。
そしてもう一つ。
畑の石をどかす作業は、今も続いている。
なぜなら――
まだこの畑には、
売れる石が、たくさん埋まっているからだ。
引用元:,記事の削除・修正依頼などのご相談は、下記のメールアドレスまでお気軽にお問い合わせください。[email protected]