会社に妊娠を報告した時、私は少し緊張していた。
でも、そこまで悪いことになるとは思っていなかった。
体調のこと。
今後の勤務のこと。
迷惑をかけないように、早めに伝えたつもりだった。
「分かりました」
会社の返事は、その時は普通だった。
だから私も、少しだけ安心していた。
3ヶ月更新の契約。
たしかに正社員ではない。
でも、今まで更新で揉めたことなんて一度もなかった。
毎回、携帯で手続きして終わり。
「更新やっといてね」
それだけだった。
面談もない。
注意もない。
成績の話もない。
勤務態度を責められたこともない。
私は普通に働いていた。
遅刻もしない。
休む時は連絡する。
任された仕事も、きちんとやってきた。
だから、今回も同じだと思っていた。
でも、妊娠を報告してから空気が変わった。
最初は小さな違和感だった。
上司の目線。
会話の短さ。
シフトの話をすると、少し濁される。
「また確認します」
「社内で相談します」
今まで聞いたことのない言葉が増えた。
そして数日後。
私は一枚の紙を渡された。
表題を見た瞬間、頭が真っ白になった。
「雇い止め理由書」
何度も読み返した。
でも、そこに書かれている意味は変わらなかった。
契約更新はしない。
理由は、能力、業務成績、勤務態度。
業務の進捗状況により判断。
作業量や難易度に比べて時間がかかる。
職場全体の業務遂行に支障がある。
私は紙を持ったまま、しばらく動けなかった。
いつから?
そんな話、いつされた?
今まで一度でも言われた?
頭の中で、これまでの勤務を必死に思い返した。
注意されたことはない。
改善指導もない。
面談もない。
更新の時に問題視されたこともない。
それなのに、妊娠を報告した後だけ、急に私は“更新できない人”になっていた。
腹が立った。
悔しかった。
でも、それ以上に怖かった。
これからお金が必要になる。
病院代もある。
生活もある。
子どもを迎える準備もある。
そんなタイミングで、仕事を切られる。
しかも理由は、今まで一度も正面から言われなかった内容。
私は思わず笑ってしまった。
笑うしかなかった。
「3ヶ月更新だから仕方ないのかな」
最初はそう思おうとした。
契約期間があるなら、会社には更新しない自由があるのかもしれない。
そうやって自分を納得させようとした。
でも、どうしても引っかかった。
なぜ今なのか。
なぜ妊娠を報告した後なのか。
なぜ今まで何も言われなかったのに、急に理由書だけは立派に出てくるのか。
私はその紙を机に置いた。
そして、スマホで写真を撮った。
表題。
本文。
日付。
会社名。
全部残した。
その後、雇用契約書を探した。
これまでの更新の履歴も確認した。
会社とのやり取り。
携帯で更新していた記録。
上司からのメッセージ。
シフト表。
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