駐車場に着いた瞬間、嫌な予感がした。
いつも停めている場所に、見覚えのない車があった。
水色のコンパクトカー。
沖縄ナンバー。
堂々と、私が契約している区画に停まっている。
一瞬、頭が真っ白になった。
またか。
本当に、またなのか。
そこは月極の契約駐車場だ。
空いている場所ではない。
誰でも使える来客スペースでもない。
私が毎月お金を払って借りている場所だ。
しかも、すぐ目の前には看板が立っている。
「違法駐車禁止」
「契約者専用」
「タイヤロック」
「迷惑料」
赤い文字で、はっきり書かれている。
見えないわけがない。
それなのに、その車は看板の真横に停まっていた。
まるで、読む気なんて最初からないと言っているようだった。
私は車の前でしばらく立ち尽くした。
怒りで手が震えた。
正直に言う。
一瞬、オキアミでもぶちまけてやろうかと思った。
あの匂いがどれだけ強烈か、釣りをする人なら分かる。
車内に入ったら、しばらく地獄だ。
そう考えた瞬間、少しだけスッとした。
でも、すぐに思い直した。
ダメだ。
それをやったら、こっちが悪くなる。
相手が無断駐車しているのは間違いない。
でも、車に何かした瞬間、話が変わる。
被害者だったはずの私が、加害者にされる。
それだけは絶対に嫌だった。
私は深呼吸した。
車には触らない。
紙も貼らない。
傷もつけない。
ただ、記録する。
スマホを出して、写真を撮った。
車の全体。
停まっている区画。
看板との位置関係。
ナンバー。
タイヤの位置。
道路側から見た角度。
どこから見ても、契約区画に無断で停めていると分かるように撮った。
次に、時間をメモした。
到着した時刻。
車を確認した時刻。
その時点で持ち主がいないこと。
周囲に連絡先が置かれていないこと。
全部残した。
それから管理会社へ電話した。
「私が契約している駐車場に、知らない車が停まっています」
最初、担当者の声は少し事務的だった。
「お車のナンバーは分かりますか?」
私は写真を見ながら答えた。
「分かります。看板のすぐ横に停まっています」
担当者は少し沈黙した。
「以前も同じようなことがありましたか?」
私は思わず笑ってしまった。
笑うしかなかった。
「またです」
そう言った瞬間、怒りが戻ってきた。
今回が初めてなら、まだ間違いかもしれない。
でも、何度も続けば話は違う。
誰かが“空いているからいい”と思っている。
“少しだけなら大丈夫”と思っている。
“どうせ何もされない”と思っている。
その考え方が一番腹立たしかった。
管理会社は、現地確認をすると言った。
必要なら警察にも相談するとのことだった。
私はその場で待った。
日差しは強い。
道路には車が通る。
私は自分の駐車場の前で、なぜか自分が立ち往生している。
お金を払っているのは私なのに。
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