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「ついに夜泣きの苦情が来た…」赤ちゃんの泣き声で隣人に怒られると思って開いた一枚の手紙。相手は車をブォンブォン鳴らす若いお兄さんで、覚悟して読んだのに、そこに書かれていた“まさかの一文”で私は言葉を失った。
2026/07/07

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赤ちゃんが生まれてから、私はずっと気を張っていた。

昼も夜も関係ない。

泣く時は泣く。

抱っこしても、ミルクをあげても、おむつを替えても、どうしても泣き止まない夜がある。

頭では分かっている。

赤ちゃんは泣くものだ。

でも、集合住宅ではそれだけでは済まない。

壁の向こうには、他人の生活がある。

夜中に泣き声が響くたび、私は赤ちゃんを抱きながら何度も時計を見た。

午前一時。

午前三時。

外は静か。

その静けさの中で、わが子の泣き声だけが大きく聞こえた。

「お願い、泣き止んで……」

そう思う自分が嫌だった。

赤ちゃんは悪くない。

でも、近所に迷惑をかけているかもしれない。

そう考えると、胸が苦しくなった。

特に気になっていたのが、隣の部屋の人だった。

若い男の人。

見た目は少し派手で、車の音も大きい。

駐車場でエンジン音が響くたびに、

「この人に怒られたらどうしよう」

そんなことを勝手に考えていた。

直接話したことはほとんどない。

だから余計に怖かった。

どんな人か分からない。

赤ちゃんの泣き声をどう思っているのかも分からない。

ある日、ポストを開けると、一枚の手紙が入っていた。

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宛名はなく、手書きだった。

見た瞬間、心臓が嫌な音を立てた。

「ついに来た」

そう思った。

苦情だ。

夜泣きがうるさい。

非常識だ。

静かにしろ。

そんな言葉が書かれている気がして、開くのが怖かった。

でも、逃げても仕方ない。

私は震える手で紙を広げた。

最初の一行には、こう書かれていた。

「3号室の者です。」

やっぱり隣だ。

喉が詰まった。

次の行を読んだ。

「赤ちゃんがいるとのことで、この手紙を入れました。」

もうだめだと思った。

謝らなきゃ。

菓子折りを持って行くべきか。

管理会社にも相談した方がいいのか。

そんなことが一気に頭をよぎった。

でも、その次の文章で、私は完全に固まった。

「泣き声は全く気にならないのですが」

え。

思わず、もう一度読み返した。

文句ではなかった。

怒りでもなかった。

そこには、こう続いていた。

「逆にうるさくないか心配です。」

私はその場で動けなくなった。

さらに手紙には、

「夜遅くに起こしてしまったり……」

「うるさければいつでも壁から伝えて頂きたいです。」

そう書かれていた。

文句を言われると思っていた相手が、逆にこちらを気遣っていた。

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赤ちゃんの泣き声ではなく、自分の生活音を心配してくれていた。

その瞬間、張り詰めていたものが一気に切れた。

涙が出そうになった。

ずっと怖かった。

ずっと申し訳なかった。

夜中に泣かれるたび、壁の向こうから怒られている気がしていた。

でも実際には、隣の人は何も責めていなかった。

むしろ、こちらの負担にならないように、わざわざ手紙を書いてくれていた。

私はその手紙を何度も読んだ。

字は少し不器用だった。

でも、言葉はとても優しかった。

勝手に怖い人だと思っていた自分が、少し恥ずかしくなった。

車の音が大きいから。

見た目が若くて派手だから。

話したことがないから。

それだけで、私は相手を決めつけていた。

翌日、私は小さなお菓子を用意した。

そして、赤ちゃんを抱っこしながら、3号室の前に立った。

チャイムを押す指が少し震えた。

出てきたのは、あの若い男の人だった。

少し驚いた顔をしていた。

私はすぐに頭を下げた。

「お手紙、ありがとうございました。夜泣きでご迷惑をおかけしていたらすみません」

すると彼は、慌てたように首を振った。

「いやいや、本当に全然大丈夫です。赤ちゃんは泣くもんじゃないですか」

その言い方が、あまりにも自然で。

また泣きそうになった。

彼は少し照れたように笑って、

「むしろ俺の車とか、うるさかったら言ってください」

と言った。

私は思わず笑ってしまった。

あんなに怖かった相手が、目の前ではただの優しい隣人だった。

家に戻って、もう一度手紙を見た。

たった数行の紙。

でも、その紙に救われた。

子育て中の母親は、思っている以上に孤独になる。

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赤ちゃんの泣き声ひとつで、自分が悪いことをしているような気持ちになる。

周りに迷惑をかけている。

嫌われている。

そう思い込んでしまう。

でも、世の中にはちゃんと見てくれている人もいる。

責めるためではなく、支えるために声をかけてくれる人もいる。

私はその手紙を捨てられなかった。

引き出しの中に、大切にしまった。

いつかまた夜泣きで心が折れそうになった時、読み返すために。

「泣き声は全く気にならない」

その一文に、どれだけ救われたか分からない。

人は見た目だけでは分からない。

車の音だけでも分からない。

本当にその人がどんな人かは、こういう時に出る。

私は今日も赤ちゃんを抱っこしている。

泣く日もある。

眠れない夜もある。

でも、壁の向こうに少し優しい人がいる。

そう思えるだけで、前より少し呼吸が楽になった。

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