「子どものズボンから値札が9枚出てきて、店で疑われた。」
意味が分からなかった。
しまむらで買って、洗濯してから保育園に履かせただけのズボン。
帰ってきて、いつも通り洗濯しようとして、何気なくポケットをひっくり返した。
——バサッ。
床に落ちたのは、値札の束だった。
一枚、二枚じゃない。
何枚も重なって、ぐちゃっとした紙の塊。
数えたら、9枚。
しかも全部、見覚えのない商品。
手が止まった。
「……え?」
頭の中で、一瞬でいくつも考えが巡る。
保育園で誰かのと混ざった?
先生が間違えて入れた?
でも——
このズボン、今日履いていったやつだよね。
もう一度、ポケットを確認する。
確かに、このズボンの中から出てきた。
じわっと、嫌な感覚が広がる。
「これ、もし店で見つかったら?」
万引き。
その言葉が浮かんで、背中が冷えた。
子どもが疑われたらどうする?
いや、私が疑われる?
——無理。
私はすぐに、ズボンと値札をまとめた。
レシートも探して、バッグに入れる。
そのまま、店に向かった。
店内は、いつもと同じだった。
明るい照明。
整った棚。
普通の空気。
でも、私の中だけが違う。
レジに立っていた店員に声をかける。
「すみません、このズボンなんですが」
袋から取り出して見せる。
「ポケットから、これだけ値札が出てきました」
値札を並べると、店員の視線が止まった。
一瞬だけ、表情が変わる。
でもすぐに戻った。
「……どうされましたか?」
その言い方に、少しだけ違和感があった。
私は落ち着いて説明する。
「こちらで購入して、洗濯してから履かせただけです」
「他のものが入る状況はないと思います」
店員は値札を手に取り、ざっと見てから言った。
「こちらでは、そのようなことはありません」
そして、少し間を置いて。
「お客様のものでは?」
その瞬間、空気が変わった。
後ろに並んでいた客の視線が、集まるのが分かる。
小さなざわめき。
説明しているはずなのに、
立っているだけで居心地が悪い。
まるで、私が何か隠しているみたいに。
私は一度だけ、息を整えた。
「レシートもあります」
そう言って差し出す。
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