幼稚園の先生に、息子が“漏らしマン”って呼ばれた。
しかも、他の子も保護者もいる前で。
袋に入ったパンツを、ひらひらさせながら。
その光景、正直いまだに忘れられない。
その時、私は下の子を抱えていた。
雨上がりで足元も悪くて、時間もなくて。
頭の中もぐちゃぐちゃだった。
だから、何も言えなかった。
ただ、その場をやり過ごすしかなかった。
でも、それが間違いだった。
帰りの車の中で、息子に聞いた。
「先生に何か言われた?」
少し間があって、
「……漏らしマンって言われた」
小さな声でそう言った。
そのまま、泣き出した。
「幼稚園、行きたくない」
その一言で、胸が締め付けられた。
——あの時、なんで何も言えなかったんだろう。
ただの一言じゃない。
3歳にとって、それは“名前”みたいなものだ。
笑いながら言われた一言が、そのまま残る。
私はその夜、ずっと考えていた。
あの先生は、悪気がなかったのかもしれない。
まだ若くて、子どもと同じ目線で接するタイプ。
実際、これまで息子も「楽しい」って言ってた。
でも、それとこれとは別だ。
境界線が分かっていない。
やっていいことと、ダメなこと。
その区別ができていない。
それが一番怖いと思った。
思い返せば、違和感は前からあった。
ちょっとした言い方。
距離感。
「友達みたいな先生」で済ませていたけど、
本当は引っかかっていた。
私は見ないふりをしていただけだった。
次の日、幼稚園は休ませた。
無理に行かせる気にはなれなかった。
その代わり、しっかり話すことにした。
園長先生に、時間を取ってもらった。
最初は、正直緊張していた。
大げさに思われるんじゃないか、とか。
でも、話し始めたら止まらなかった。
その場の状況。
先生の言葉。
息子の反応。
全部、ありのまま伝えた。
園長先生の表情が、途中で変わった。
「それは……配慮が足りませんでした」
はっきりそう言った。
その場で謝罪もあった。
その後、担任の先生も呼ばれた。
先生は、最初は少し戸惑っていた。
でも話を聞くうちに、顔色が変わっていった。
「そんなつもりじゃ……」
「冗談のつもりで……」
そう言っていた。
でも、それが問題なんだと思った。
冗談で済ませていい相手じゃない。
相手は3歳だ。
「冗談」が、そのまま傷になる年齢だ。
私はできるだけ感情的にならないように言った。
「本人は、泣いています」
「幼稚園に行きたくないって言ってます」
その一言で、空気が変わった。
先生は言葉を失っていた。
最終的に、改めて謝罪があった。
今後の対応についても話があった。
正直、それで全部解決とは思っていない。
でも、何も言わないよりはよかった。
帰り道、少しだけ肩の力が抜けた。
家に帰って、息子に言った。
「ちゃんとお話してきたよ」
すると、少し安心した顔をした。
それを見て、やっと少し救われた気がした。
あの時、その場で言えなかったことは後悔してる。
でも、そのあと何もしないのは違うと思った。
子どもを守れるのは、結局親しかいない。
私はもう一度、あの日のことを思い出して、小さく呟いた。
「やっぱり、普通じゃなかったよね」
引用元:,記事の削除・修正依頼などのご相談は、下記のメールアドレスまでお気軽にお問い合わせください。[email protected]