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レシートの端に書かれた「無料」の二文字が、私と夫の間に静かなズレを生んだあの日のこと...
2026/01/29

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「それ、どうするの?」

レジ横で立ち止まった私に、夫がそう聞いた。
彼の視線の先には、会計を終えたばかりのレシートがある。
よく見ると、下の方に小さな文字でこう書いてあった。

――次回、対象商品1本無料。

あっ、と心の中で声が出た。
この「無料」という二文字を、私は見逃さない。
見逃せない。
主婦になってからというもの、これはもはや反射神経の問題だ。

「これ、次来た時に飲み物もらえるんだって」

少しテンション高めで言う私に、夫はレシートを一瞥してから、あっさり言った。

「俺、飲まないけど」

……あ?

「いや、俺は別に飲まないからさ。
また今度でいいんじゃない?」

その瞬間、私の中で何かが静かに、しかし確実に音を立てて崩れた。

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飲まない。
うん、それはいい。
飲まないのは自由だ。
誰も強制していない。

でも。

飲まない = 要らない、ではない。

この二つを同一視されると、私はとても困る。

「いや、私は飲むし」

即座にそう返すと、夫は少し驚いた顔をした。

「え?でも、あんまりそういうの飲まなくない?」

確かに、私は普段あまり甘い飲み物を飲まない。
家では水かお茶がほとんどだ。
冷蔵庫にジュースが入っていることは、ほぼない。

だからといって。

無料の飲み物が目の前に現れた瞬間まで、
それを「飲むかどうか」で判断しなければならない理由は、どこにもない。

私はゆっくり息を吸ってから言った。

「私が飲むかどうかは、今決めることじゃない」

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夫は完全に意味が分からない顔をしている。

「どういうこと?」

私は心の中で思った。

――ああ、これは説明が必要なやつだ。

「飲まないかもしれない。
でも、もらえるなら、もらう」

それが、私の答えだった。

夫は少し困ったように笑った。

「いや、でもさ、
結局飲まないなら意味なくない?」

この「意味なくない?」という言葉。

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