百個のお弁当を並べ終えた時、厨房の時計は朝の十時を少し過ぎていた。
湯気が上がるご飯。
色を見ながら詰めたおかず。
一つずつ閉じたフタ。
テーブルいっぱいに並んだ黒い容器を見て、私は小さく息を吐いた。
「間に合った」
それが最初の気持ちだった。
あっちゃん弁当は、大きなお店ではない。
駅前のチェーン店でもない。
家族と数人のスタッフで回している、小さなお弁当屋だ。
朝早くから米を炊き、野菜を切り、揚げ物をし、煮物の火加減を見て、やっと一日が始まる。
だから百個の注文は、うちにとって大仕事だった。
ありがたい。
本当にありがたい。
そう思って、前日から仕込みを増やした。
いつもの倍以上の米を用意した。
卵も、鶏肉も、野菜も、容器も、多めに発注した。
冷蔵庫の中は、まるで遠足前の学校みたいにぎゅうぎゅうだった。
当日の朝も、いつもより早く店に入った。
まだ外が少し暗い時間から、厨房の電気をつけた。
炊飯器の音。
油のはねる音。
包丁がまな板を叩く音。
スタッフの「これ次どこですか?」という声。
私たちは必死だった。
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