今日の朝9時ごろ。
私はいつものように電車に乗っていた。
車内はそれなりに混んでいた。
立っている人もいたけれど、身動きが取れないほどではない。
私は座席に座り、足元に自分の荷物を置いていた。
通路を塞がないように。
隣の人の邪魔にならないように。
自分の足の前に、できるだけ小さく収めていた。
特に問題があるとは思っていなかった。
ところが突然、近くに座っていた女性が私を睨んだ。
そして、強い口調で言った。
「足の上に荷物、置かないでもらえます?」
一瞬、何を言われたのか分からなかった。
足の上?
私はすぐ荷物を見た。
バッグは私の足元にある。
女性の靴には触れていない。
そもそも、相手の足の上になんて置いていない。
私は戸惑いながら答えた。
「置いていませんけど……」
女性は何も言わなかった。
ただ、じっと私を睨んでいた。
その視線が妙に強かった。
私が嘘をついていると決めつけているような目だった。
もしかすると、バッグが近いこと自体が嫌だったのかもしれない。
そう思い、私は荷物をさらに自分の方へ引き寄せた。
これなら絶対に邪魔にならない。
そう思った。
でも、その直後だった。
ゴン。
バッグが揺れた。
女性の靴が当たっていた。
偶然かと思った。
電車が揺れたのかもしれない。
だから私は何も言わなかった。
ところが、少しするとまた、
ゴン。
今度は明らかに足を伸ばしてきた。
バッグの端が押された。
私は相手を見た。
女性は窓の方を向いていた。
まるで何もしていないような顔をしている。
でも、足だけはこちらへ伸びている。
嫌な予感がした。
私はバッグをさらに膝の近くまで寄せた。
それでも終わらなかった。
ゴン。
また蹴られた。
そして、もう一度。
さらにもう一度。
正確には数えていなかったけれど、5回くらいは当てられたと思う。
もう偶然ではなかった。
明らかに、こちらの荷物を狙って足を動かしている。
私は胸がざわついた。
怒りより先に、怖さが来た。
注意された理由も分からない。
荷物は相手の足に触れていない。
それなのに、なぜ私が何度も蹴られなければならないのか。
周囲の人も、少しずつ異変に気づいていた。
隣の人がちらっと足元を見る。
向かい側の人も、一瞬こちらへ視線を向ける。
でも、誰も何も言わない。
私もすぐには言えなかった。
もし注意して、もっと怒らせたらどうしよう。
大声を出されたら。
突然何かされたら。
朝の電車の中で、知らない人と揉めるのは怖い。
そう考えているうちに、信じられないことが起きた。
女性が足を大きく伸ばした。
そして、私のバッグの上へ靴を乗せた。
本当に、堂々と。
バッグを足置きのように使った。
私は言葉を失った。
さっき私に、
「足の上に荷物を置くな」
と言った人が。
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