在日十年目。
もう日本のスーパーくらい、余裕で攻略できると思っていた。
駅の乗り換えもできる。
役所の書類もなんとか読める。
コンビニのレジ袋確認にも動揺しない。
値引きシールだって、何度も見てきた。
半額。
三割引。
二十円引。
夕方のスーパーで光るあのシールは、私にとって小さな勝利の旗だった。
その日も、私は仕事帰りにスーパーへ寄った。
時間は夜。
店内には、疲れた会社員と、献立を諦めた顔の人たちが漂っていた。
私もその一人だった。
料理をする気力はない。
でも何か食べないと倒れる。
そんな時、総菜コーナーの冷蔵棚で見つけた。
冷たいそば。
ちょうどいい。
胃に重くない。
洗い物も少ない。
そして何より、そこに赤いシールが貼られていた。
「10%」
私はそれを見た瞬間、心の中で小さくガッツポーズをした。
来た。
値引きだ。
しかもそば。
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