混んでいる電車で、二人がけの椅子の通路側にひとりで座っている人を見るたび、私は心の中で小さく叫ぶ。
「そこ、奥に詰めてくれませんか」
その日も、まさにそれだった。
帰りの電車はそこそこ混んでいた。
ぎゅうぎゅうの満員ではない。
でも、座れるなら座りたいくらいには人が多い。
通路には立っている人が何人もいて、吊り革も埋まっていた。
私は仕事帰りで、足がじんじんしていた。
肩には荷物。
手には傘。
一刻も早く座りたい。
そんな時、目の前に二人がけの座席が見えた。
窓側が空いている。
助かった。
そう思ったのも一瞬だった。
通路側に、ひとり座っている人がいた。
しかも、奥へ詰める気配がない。
完全に通路側をキープしている。
窓側はぽっかり空いているのに、そこへ人が入るには、その人の前を無理やり通らなければならない。
私は一度、見なかったことにしようとした。
他にも席があるかもしれない。
そう思って車内を見回した。
ない。
どこも埋まっている。
立っている人も多い。
記事はまだ終了していません。次のページをクリックしてください