あの日、車に貼られていた一枚の紙を見た瞬間、正直かなり焦った。
仕事から帰ってきて、いつものようにアパートの駐車場に車を停めようとした時だった。ふとフロントガラスを見ると、ワイパーにくしゃくしゃの紙が挟まっている。
「ん?」
嫌な予感がして紙を取り出してみると、そこには手書きでこう書かれていた。
「ここは101号室で現在月契約して使用している駐車場です!速やかに車を移動させて下さい!」
一瞬、頭が真っ白になった。
というのも、このアパートは賃貸で、各部屋ごとに専用の駐車場が一台分ついている。それとは別に、空きがあれば追加で借りられる駐車枠が一つだけある。
そしてその追加枠を、私は10月の頭から正式に契約して借りている。
つまり、この場所に車を停めているのは何も間違っていない。
それなのに「101号室の駐車場」と書かれている。
どういうことだ?
私はすぐにスマホを取り出し、不動産会社に電話をかけた。
事情を説明すると、担当者はすぐに契約内容を確認してくれた。
そして返ってきた答えははっきりしていた。
「はい、その駐車場は〇〇さんが10月から契約されています。間違いありません」
やっぱりそうだ。
こちらは正当に借りている。
ただ、そこで一つ思い当たることがあった。
実はこの駐車枠、以前から101号室の人が車を停めているのを何度か見たことがある。
ただその時は、私はまだ車を持っていなかった。
だから「前の人が使っていたのかな」くらいにしか思っていなかったし、正直そこまで気にもしていなかった。
そして10月に入り、この駐車場を正式に契約した。
だがその後も、何度かその車が停まっているのを見ている。
とはいえ、その頃はまだ自分の車がなかった。
だから
「まあ、まだ使ってるのかな」
くらいに思って、正直見て見ぬふりをしていた。
それなのに――
いざ自分が車を停めたら、今度は
「ここは101号室の駐車場」
と書かれた紙を貼られる。
さすがにこれはおかしい。
私はもう一度、不動産会社に事情を説明した。
すると担当者は少し驚いた様子で言った。
「それはおかしいですね。こちらから101号室の方に確認してみます」
数時間後、不動産会社から折り返しの電話が来た。
「101号室の方に確認しましたが、紙を貼った覚えはないと言っているそうです」
思わず苦笑いしてしまった。
じゃあ、あの紙は誰が貼ったんだ。
内容は明らかに101号室を名乗っている。
勘違いなのか、それとも知らないふりなのか。
どちらにしても、正直少し面倒な雰囲気を感じた。
不動産会社は最後にこう言った。
「その駐車場は〇〇さんの契約なので問題ありません。もしまた何かあればすぐ連絡してください」
その時はそれで終わった。
だが数日後。
仕事から帰ってきた私は、思わず立ち止まった。
自分の駐車場に、知らない車が停まっている。
一瞬、状況が理解できなかった。
いや、間違いない。
そこは自分が契約している駐車枠だ。
だが車が停まっている以上、私の車は停められない。
夜遅かったこともあり、仕方なく私はまた管理会社に電話した。
事情を説明すると、担当者はすぐに状況を理解した。
「それは困りますね。こちらからすぐ対応します」
翌日。
管理会社から連絡が来た。
どうやら住民全体に通知を出したらしい。
内容はこうだった。
その駐車場は私が契約している区画であること。そして
「今後、無断で駐車した場合は違反として対応する」
というものだった。
それ以来、その駐車場に他の車が停まることはなくなった。
正直、最初からこうしてくれればよかったと思う。
ただ一つだけ、今でも思うことがある。
もし本当に勘違いだったなら――
紙を貼る前に、不動産会社に電話すれば済む話じゃないか?
集合住宅には本当にいろんな人がいる。
今回の件で、それを改めて実感した出来事だった。