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「1万円札を出しただけで偽札扱い」会計中に店員が警察まで呼んだ結果、犯罪者みたいに見られた私ではなく店長が警官にガチ説教された話
2026/06/10

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渋沢栄一の一万円札が出てから、もうずいぶん経つ。

最近は財布の中を見ても、新しい顔にだいぶ慣れてきた。

でも、その日、私の財布に入っていたのは昔の一万円札だった。

聖徳太子。

今の若い人には、少し珍しく見えるかもしれない。

でも、もちろん本物だ。

昔から使われてきた、ちゃんとした日本銀行券。

私は特に深く考えず、その一万円札を会計で出した。

金額は普通の買い物だった。

レジの前で財布を開き、札を一枚取り出して、店員さんに渡す。

ただ、それだけのはずだった。

ところが、店員さんの手が止まった。

一万円札をじっと見る。

裏返す。

もう一度見る。

その顔が、だんだん固くなっていく。

私はその様子を見て、少し嫌な予感がした。

「どうしました?」

そう聞く前に、店員さんが大きめの声で言った。

「これ、偽札じゃないですか?」

店内の空気が止まった。

偽札。

その言葉だけが、やけに大きく響いた。

隣のレジの人もこっちを見る。

後ろに並んでいた客も、微妙に距離を取る。

私は一瞬、何を言われたのか分からなかった。

「いや、本物ですよ」

そう言っても、店員さんは納得しない。

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「見たことないので」

見たことない。

その一言で偽札扱いされる時代が来たのか。

私は頭の中で、聖徳太子に少し同情した。

昔は堂々と一万円札の顔だったのに、今ではレジ前で身分証明を求められている。

やがて店長らしき人が来た。

店員さんは、その札を見せながら説明した。

「このお客様が、偽札みたいなお金を出してきて……」

偽札みたいなお金。

言い方がさらに悪くなっている。

私は静かに言った。

「古い一万円札です。使えるはずです」

店長も札を見た。

眉をひそめた。

「警察を呼びます」

その瞬間、私はさすがに笑いそうになった。

笑う場面ではない。

でも、あまりにも展開が急すぎた。

買い物に来ただけなのに、いつの間にか通貨偽造の疑いである。

私は逃げる理由もないので、そのまま待った。

店内の端で、まるで事情聴取前の容疑者みたいに立っている。

周囲の視線が痛い。

財布にはレシート用の小銭と、疑われた聖徳太子。

気まずい。

本当に気まずい。

しばらくして、警察官が来た。

店長は少し強気な顔で事情を説明した。

「偽札と思われるものを出されたので」

警察官は札を受け取り、確認した。

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そして、すぐに表情を変えた。

私ではなく、店長の方を見た。

「これは旧一万円札ですね。現在も有効です」

その一言で、店内の空気が一気にひっくり返った。

私は何も言っていない。

でも心の中では、机を叩いていた。

ほら見ろ。

聖徳太子、無罪。

警察官は続けた。

「確認せずに偽札と決めつけるのは困ります。お客様に失礼ですし、騒ぎにする前に調べてください」

店長の顔が赤くなった。

さっきまでの勢いは、どこかへ消えていた。

店員さんも下を向いている。

私はその場で、妙に冷静になった。

怒鳴りたい気持ちがなかったわけではない。

でも、警察官がきっちり言ってくれたので、こちらが大声を出す必要はなかった。

むしろ、静かにしていた方が効く。

店長は小さく頭を下げた。

「申し訳ありませんでした」

私は財布に戻された一万円札を見た。

今日一番疲れたのは、私ではなくこの札かもしれない。

長年日本で流通してきたのに、令和のレジでいきなり偽札扱い。

歴史ある紙幣も大変である。

会計は別の札で済ませた。

さすがに、その場でまた聖徳太子を出す気にはなれなかった。

店を出ると、外の空気がやけに軽く感じた。

ただ買い物をしたかっただけなのに、警察まで呼ばれるとは思わない。

家に帰ってから、私は改めてその一万円札を机に置いた。

古い。

たしかに古い。

今の札に比べると、色も雰囲気も違う。

でも、偽物ではない。

知らないことは仕方ない。

若い店員さんが見たことなくても、それは責めない。

ただ、知らないなら調べればいい。

確認すればいい。

いきなり「偽札」と言って警察を呼ぶ前に、できることはある。

今回、警察官にめちゃくちゃ叱られたのは私ではなかった。

店長だった。

そこだけは、少しだけスッとした。

聖徳太子の一万円札は、今もちゃんと使える。

ただし、使う場所によっては、会計より先に時代説明が必要になるらしい。

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