朝、田んぼを見に行った瞬間、足が止まった。
水面はいつも通り静かだった。
植えたばかりの苗が、細い線のように並んでいる。
風が吹くと、若い緑が少しだけ揺れる。
その景色を見るのが、私はけっこう好きだった。
田植えが終わったばかりの田んぼには、独特の安心感がある。
今年も始まったな。
今年もちゃんと育ってくれよ。
そんな気持ちで、毎朝なんとなく様子を見に行く。
ところが、その日は違った。
田んぼの端。
隣の家の敷地に近いあたりだけ、苗の色が妙におかしかった。
緑が薄い。
というより、黄色っぽい。
さらによく見ると、先端がしおれている。
水の中に立っているはずの苗が、力を失ったみたいにへたり始めていた。
「……なんやこれ」
私は長靴のまま、あぜにしゃがんだ。
手で水をすくう。
匂いを確認する。
土の匂いとは違う、少しツンとした違和感があった。
そこで、視線を横へ向けた。
隣の家の敷地との境目。
草が茶色く枯れている。
その枯れた帯が、うちの田んぼ側へ向かって伸びていた。
嫌な予感がした。
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