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「500円で人を見下すな」26年無苦情の個人タクシー運転手に“可哀想だから乗ってやる”と吐いた客…汚れた千円札を置かれた瞬間、黙って記録に残した話
2026/06/09

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客の悪口は、できれば言いたくない。

こっちも商売だ。

いろんな人が乗る。

急いでいる人。

機嫌の悪い人。

無口な人。

行き先をなかなか言わない人。

それでも、こちらはハンドルを握って、淡々と目的地まで送る。

それが仕事だ。

二十六年、苦情なしでやってきた。

余計なことを言わない。

腹が立っても飲み込む。

金にならないトラブルは避ける。

それが、個人タクシーで食っていくための私なりのルールだった。

その日、私は某駅のタクシー乗り場の先頭で待機していた。

列にいるのは私一台だけ。

後ろにタクシーはいない。

駅前は少し静かで、人の流れもまばらだった。

しばらくすると、前方からカートを押したおばあさんと、娘さんらしき女性が歩いてきた。

二人はこちらを見て、何か話している。

女性が私の車を指さす。

おばあさんは首を少し傾げる。

私はすぐに察した。

「ジャパンタクシーに乗りたいのかな」

最近は、足腰の悪い人や荷物の多い人は、ああいう背の高い車を好む。

分かる。

私の車は昔ながらのセダンタイプだ。

乗り降りしにくいと言われれば、それも分かる。

だから、二人が少し離れた場所で待っていても、私は特に何も言わなかった。

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次のタクシーが来るまで待つつもりなのだろう。

そう思っていた。

ところが、五分ほど経っても後続のタクシーは来ない。

客も来ない。

駅前の時間だけが、やけにゆっくり流れていた。

やがて痺れを切らしたのか、二人が私の車の横へ来た。

私はすぐにドアを開けた。

カートをトランクに積むために外へ出る。

その瞬間だった。

娘さんが、おばあさんに小さく言った。

「お母さん、コレしか無いのよ」

コレ。

私は一瞬、耳を疑った。

タクシーではなく、コレ。

その言い方に、まず小さく刺された。

そして次に、おばあさんが言った。

「こんな車イヤだ」

カチン、ときた。

いや、来るだろう。

こっちはわざわざ車を降りて、荷物を積もうとしている。

乗る前から、車を見下される筋合いはない。

嫌なら乗らなくていい。

本当に、それだけの話だ。

喉まで出かかった。

けれど、私は飲み込んだ。

ここで言えば、ただのケンカになる。

こちらが正しくても、駅前で揉めればこちらの負けだ。

そこへ、さらに別の爺さんが現れた。

どこから来たのか知らない。

まるで舞台の追加キャストみたいに、横から割って入ってきた。

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「あんたたち、タクシーに乗らんのかね?」

おばあさんが答える。

「この車、イヤなの」

爺さんは、なぜか勝手に納得した顔で私の車を見た。

「個人タクシーがイヤなのか? わしも個タクは嫌いだけど、可哀想だから乗ってやるんだよ」

可哀想。

その言葉を聞いた瞬間、私の中で何かが静かに倒れた。

可哀想なのは、今からあなたを乗せる私の方ではないのか。

だいたい、おばあさんは個人タクシーが嫌だとは一言も言っていない。

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