店で見た時、その上着は完全に茶色だった。
少なくとも、私の目にはそう見えた。
落ち着いたブラウン。
白いTシャツにも合う。
デニムにも合う。
秋っぽいし、大人っぽいし、何より「無難」だった。
私は無難が好きだ。
服で冒険して失敗する体力は、もうあまり残っていない。
店内の鏡の前で羽織った時も、悪くなかった。
照明は少し黄色っぽくて、売り場全体がふんわり暖かい色に見えた。
私は袖を通しながら思った。
「これ、いいじゃん」
茶色の透かし編み。
軽い。
涼しい。
でも羽織るだけで、ちょっとちゃんとして見える。
試着室の鏡の中の私は、なかなか満足していた。
店員さんにも聞いた。
「これ、茶色ですよね?」
店員さんはにこっと笑った。
「そうですね、合わせやすいお色です」
合わせやすいお色。
その言葉に背中を押され、私はレジへ向かった。
袋を受け取る時には、完全に勝った気でいた。
いい買い物をした。
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