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「高級肉2パックが数分でほぼ全滅」BBQ配信用に買った肉を食い逃げされた私が、空のパックを囮にしてスマホを回した結果
2026/06/10

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その日、私は完全に浮かれていた。

配信でBBQをやろうと思っていた。

ただ焼くだけじゃつまらない。

どうせなら、ちょっといい肉を買って、画面の向こうのみんなに見せびらかしながら焼こう。

「うわ、うまそう」

「飯テロやめろ」

そんなコメントが流れるところまで、頭の中で再生済みだった。

だから私は、いつもより少し高い肉を二パック買った。

味付け焼肉。

もう一つは、見るからに脂がうまそうなやつ。

パックを手に取った時点で、勝利を確信した。

今日は優勝。

これを焼けば、配信は盛り上がる。

私の胃袋も盛り上がる。

完璧な計画だった。

店を出て、自転車のカゴに肉を入れた。

炭もある。

道具もある。

あとは飲み物だけ。

暑かったし、BBQにはドリンクが必要だ。

私は近くの自販機に向かった。

ほんの少しの距離だった。

本当に、ほんの少し。

肉から目を離した時間は、たぶん一分か二分。

自販機の前で、何を買うか迷った。

炭酸にするか。

お茶にするか。

配信用にちょっと映える飲み物にするか。

今思えば、その迷いが命取りだった。

ガコン、とペットボトルが落ちる音。

私はそれを拾い、軽い足取りで自転車へ戻った。

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その瞬間、空気が変わった。

カゴの中が、妙に白い。

さっきまでそこにあったはずの肉の赤みがない。

近づく。

心臓が嫌な跳ね方をした。

肉のパックが、開いていた。

いや、開いていたというより、襲撃後だった。

ラップは破られ、肉はほとんど消えている。

残っているのは、端っこの小さな一切れと、タレの跡。

スパイスの粒だけが、事件現場みたいに散らばっていた。

私はしばらく立ち尽くした。

「え?」

声が出た。

誰も答えない。

自転車のカゴには、空になった高級肉の容器。

手には、今買ったばかりの飲み物。

そして私の頭の中には、さっきまでの配信計画が音を立てて崩れていた。

周囲を見る。

犯人はいない。

ただ、少し離れたところに、黒い影が動いた気がした。

カラスか。

猫か。

それとも、肉だけを狙う通りすがりのプロか。

正体は分からない。

でも、仕事が早すぎる。

私は自販機で飲み物を買っただけだ。

その間に、二パックの高級肉をほぼ食べるとは何事か。

しかも、安い部分からではない。

うまそうなところをちゃんと持っていっている。

犯人、肉を見る目だけは確かだった。

私はパックを持ち上げた。

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軽い。

あまりにも軽い。

さっきまでの重量感はどこへ行ったのか。

あの肉は、配信で焼かれる予定だった。

炭火でじゅうじゅう音を立てる予定だった。

コメント欄を沸かせる予定だった。

それが今、誰かの胃袋で先行配信されている。

しかも無断で。

私は思わず叫びそうになった。

「返してくりー!」

もちろん、返ってこない。

食べられた肉は戻らない。

人生の真理である。

その場で怒るより先に、なんだか笑えてきた。

肉を買った。

飲み物を買った。

戻ったら肉が消えていた。

話としてはシンプルすぎる。

でも、被害額と精神的ダメージはまったくシンプルではない。

高級肉二パック。

配信の主役。

私の夕飯。

全部まとめて、野外の何者かに奪われた。

私はスマホを取り出し、空のパックを撮った。

配信のネタにはなる。

いや、なってしまう。

本当は肉を焼いて見せるはずだったのに、視聴者に見せるのは食後の容器。

BBQ配信ではなく、犯行現場実況である。

「こちら、肉があった場所です」

「犯人はすでに逃走しています」

そんな説明しかできない。

私は自転車の前で深呼吸した。

たった一分でも、食べ物を外に置きっぱなしにしてはいけない。

特に肉。

特に高い肉。

特に、これから配信で自慢しようとしている肉。

世の中には、人間より早くうまいものを見つける存在がいる。

油断した私が悪い。

でも、全部持っていくことはないだろう。

せめて一枚残してほしかった。

いや、一枚残っていた。

小さな一切れだけ。

あれは何だ。

良心か。

それとも満腹の限界か。

私は残された肉片を見ながら、妙な敗北感に包まれた。

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結局、その日のBBQは予定変更になった。

主役不在。

肉、ほぼ消失。

飲み物だけは無事。

あまりにも切ない。

でも、配信を始めて事情を話したら、コメント欄はめちゃくちゃ盛り上がった。

「それは草」

「肉泥棒強い」

「高級肉、秒で完売」

「犯人グルメすぎる」

笑うな。

いや、笑ってくれ。

もう笑いに変えないとやってられない。

私は空のパックを見せながら言った。

「本日のBBQ、主役は旅立ちました」

その瞬間、今日の配信タイトルは決まった。

高級肉二パック、焼く前に食われる。

人生、何がネタになるか分からない。

ただ一つだけ学んだ。

自販機で飲み物を買う時でも、肉から目を離してはいけない。

高級肉は、焼く前からすでに戦場にいる。

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