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「夫に肉じゃがを盛らせたら私の皿だけ肉ほぼゼロ」“たまたま”と言い張る夫の前で2つの皿を並べ、肉の枚数を数えた結果
2026/06/08

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夕方、台所はすでに戦場だった。

仕事から帰ってきて、洗濯物を取り込み、子どもの連絡帳を見て、炊飯器のスイッチを入れる。

その合間に、私は鍋の前に立っていた。

今日の夕飯は肉じゃが。

じゃがいも。

にんじん。

玉ねぎ。

しらたき。

そして、牛肉。

少しだけ奮発した。

「今日は肉多めにしよう」

そう思って買ったのだ。

別に高級肉ではない。

でも、肉じゃがにおける肉は主役だ。

少なくとも、ただの飾りではない。

鍋の中で、甘じょっぱい匂いがふわっと立ち上る。

玉ねぎはとろけ、じゃがいもには味が染みている。

私は一口味見して、うなずいた。

うまい。

今日は勝った。

そう思った瞬間、子どもが呼んだ。

「ママ、これ見て!」

洗面所では洗濯機も鳴っている。

スマホにも通知。

全部が一気に来る。

私はリビングにいた夫へ声をかけた。

「ごめん、肉じゃが盛り付けてくれる?」

夫はソファから顔だけ上げた。

「いいよー」

その返事に、私は少し安心した。

たまには手伝ってもらってもいい。

鍋から器へよそうだけだ。

難しい作業ではない。

ただ、私は忘れていた。

うちの夫は、料理の盛り付けにおいて、なぜか人間性が出るタイプだった。

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数分後、食卓に二つの器が並んだ。

私は席につき、箸を持った。

そして、自分の器を見た。

じゃがいも。

じゃがいも。

にんじん。

玉ねぎ。

また、じゃがいも。

私は一瞬、固まった。

肉は?

箸でそっと掘った。

下にも、じゃがいも。

右側にも、じゃがいも。

まるで芋掘り体験である。

隣を見ると、夫の器には肉が山のように乗っていた。

薄切り肉が何枚も重なり、玉ねぎの上で堂々と主張している。

ほぼ牛丼の上だけ。

私の器は、農協直売所。

夫の器は、焼肉定食。

私は静かに夫を見た。

夫は何も気づかず、満足そうに箸を伸ばしていた。

「いただきまーす」

その声が、やけに無邪気だった。

私は低い声で言った。

「ねえ」

夫の箸が止まった。

「なに?」

「私の肉、どこ?」

夫は私の器を見た。

次に自分の器を見た。

その瞬間、目が少し泳いだ。

「いや、たまたまじゃない?」

たまたま。

出た。

家庭内不平等の最終防衛ライン。

たまたま、肉が全部あなた側に行った。

たまたま、私の器にじゃがいもが集合した。

たまたま、あなたの器だけ肉フェスが開催された。

そんなわけがない。

私は鍋の中を確認した。

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残っていたのは、ほぼ煮汁と玉ねぎの破片だけ。

完全に終わっている。

つまり、肉はもう移動済み。

移動先は夫の器。

犯行は明白だった。

夫は慌てて言った。

「いや、肉が上の方にあったからさ」

「だから?」

「先に取れちゃったというか」

「取れちゃった?」

私は箸を置いた。

台所の空気が少し冷えた。

肉じゃがでここまで緊張感が出る家庭も珍しい。

夫は一枚だけ肉を私の器に移そうとした。

私はそれを手で止めた。

「今さら一枚寄付されても、慈善事業じゃないんだよ」

夫は黙った。

私は自分の器を見た。

味の染みたじゃがいもはおいしい。

それは認める。

でも問題はそこではない。

私は肉が食べたかったのだ。

しかも、自分で作った肉じゃがの肉を。

夫に盛り付けを頼んだだけで、なぜ私はじゃがいも担当大臣に任命されているのか。

私は考えた。

これは単なる盛り付けミスではない。

家庭内でよくある「自分の皿だけ無意識に良くする問題」だ。

唐揚げなら大きい方を取る。

刺身ならきれいな切り身を取る。

肉じゃがなら肉を取る。

本人は悪気がないと言う。

でも、悪気がないまま得をする人間が一番強い。

夫はまだ言い訳を探している顔をしていた。

「そんなに怒ること?」

その一言で、私の中の煮汁が沸騰した。

「怒ることでしょ。私は肉じゃがを作ったの。じゃがじゃがを作ったんじゃないの」

夫は吹き出しかけて、すぐに真顔に戻った。

笑ったら終わると本能で察したらしい。

その日は結局、夫の器から肉を半分回収した。

回収というより、返還である。

私は堂々と箸で肉を取り戻した。

夫は何も言わなかった。

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言える立場ではない。

翌日、私はカレーを作った。

そして夫にだけ、じゃがいもとにんじん多め、肉少なめで盛り付けた。

夫は皿を見て、すぐに気づいた。

「これ、昨日のやつ?」

私はにっこり笑った。

「たまたま」

夫は黙ってスプーンを持った。

その姿を見て、私は少しだけ気が晴れた。

夫婦生活とは、こういう小さな事件の積み重ねだ。

大きな裏切りではない。

でも、肉じゃがの肉を全部持っていかれると、人はちゃんと傷つく。

そして学ぶ。

夫に盛り付けを頼む時は、信頼ではなく監視が必要だ。

次から私は、鍋の横に立つ。

肉の分配が終わるまで、絶対に目を離さない。

我が家の平和は、じゃがいもの量ではなく、肉の公平性によって守られている。

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