夜の廊下で、子どもの泣き声がした。
最初は、どこかの部屋で寝ぐずっているのだと思った。
小さな子なら、夜中に泣くことくらいある。
親も大変だろう。
そう思って、私は一度、テレビの音量を下げただけだった。
けれど、その泣き声はなかなか止まらなかった。
短く泣いて、少し静かになる。
また、細い声で泣く。
「ママ」
そう聞こえた気がして、私は胸の奥がざわついた。
時計を見ると、もう深夜だった。
廊下に出ると、空気が冷えていた。
問題の部屋の前に立つ。
中から、かすかな物音がした。
大人の声はない。
テレビの音もない。
ただ、子どもが鼻をすすりながら動いている気配だけがした。
私はインターホンを押した。
返事はない。
もう一度押した。
やはり、大人は出てこない。
ドアの向こうで、小さな足音だけが近づいて、また離れた。
その瞬間、嫌な想像が現実味を帯びた。
まさか。
本当に、子どもだけなのか。
私は管理会社に連絡し、すぐに警察にも相談した。
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