昼すぎ、私はラーメン屋のカウンターに座っていた。
外は少し肌寒く、店の中には湯気と鶏ガラの匂いがこもっていた。
目の前には、ちょうど運ばれてきた熱々のラーメン。
白い湯気が立ち上り、スープの表面で油がきらきら光っている。
私は箸を割り、まず一口すすった。
うまい。
こういう日は、余計なことを考えず、ただ麺と向き合うに限る。
そう思っていた、その時だった。
入口の方から、すっと何かが動いた。
客かと思って目を向けると、そこにいたのは猫だった。
灰色まじりの、ふわっとした毛並みの猫。
堂々としている。
いや、堂々としすぎている。
まるで予約していた席に向かう常連客のような足取りで、店の入口に近づいてきた。
私は思わず箸を止めた。
「え、猫?」
声には出さなかったが、心の中では完全に二度見していた。
猫は入口の緑のマットに前足を乗せた。
そして、店内をちらっと見た。
その目が妙に冷静だった。
「ここ、入れる店ですよね?」
そんな顔をしていた。
しかも、店内の入口には猫の足跡柄のマットが敷いてある。
黒いマットに猫のシルエット。
足跡まである。
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