「私は気管支が弱いって言ってるよね」
「大げさだな」
大げさ。
その言葉を聞いた瞬間、胸の奥がざらついた。
煙を吸って苦しいのは私だ。
咳き込むのも私だ。
喉が痛くなるのも私だ。
なのに、なぜか大げさと言われる。
自分が苦しくないことは、相手にも大したことではないと決めつける。
その鈍さが、煙よりずっときつかった。
私は窓を開けた。
冷たい空気が入ってきた。
でも部屋に染みついたタバコの匂いは、すぐには消えない。
カーテン。
クッション。
壁。
服。
少しずつ、家全体に染みていく。
そのたびに私は、ここが自分の休む場所ではなく、誰かの喫煙所になっていくような気がする。
夫は何事もなかったように、またスマホに目を戻した。
その態度を見て、私はふと思った。
ああ、私はこの人と暮らし続けたいのだろうか。
タバコを吸われるたびに、離婚という言葉が頭をよぎる。
最初はそんな自分に驚いた。
たかがタバコで。
記事はまだ終了していません。次のページをクリックしてください