「天丼のアジを食べて30分後、私はトイレまで這っていた。」
3月8日。
家でWBCを観戦するため、近くのホットモット北斗市東浜店で海鮮天丼を2つ買った。
試合を観ながら、ゆっくり食べるつもりだった。
ところが、アジの天ぷらを食べようとした時、妙な違和感があった。
なんとなく気になって、衣を少し剥がしてみた。
すると――
身の表面に、黒い丸い斑点が一つあった。
「……なんだこれ?」
どう見ても普通じゃない。
気味が悪くなって、私はその場で店に電話した。
事情を説明すると、店員はあっさりこう言った。
「それはうちの特色なんです。」
私は思わず聞き返した。
「特色?」
すると店員は少し面倒くさそうに言った。
「向こうでは普通の作り方なんですよ。」
そして最後に、少し笑うような声でこう言った。
「気にしすぎじゃないですか?」
その言い方が妙に自信満々だった。
「そういうものなのか…」
私は半信半疑のまま、結局そのアジを食べてしまった。
これが、完全に間違いだった。
食後しばらくして風呂に入った。
その瞬間だった。
突然、体がゾクッと震えた。
寒気が止まらない。
「……え?」
次の瞬間、手足がビリビリと痺れ始めた。
立とうとしても足に力が入らない。
嫌な予感が一気に膨らんだ。
布団に入ったが、症状はどんどん悪くなる。
吐き気が込み上げ、視界が揺れる。
トイレに行こうとして立ち上がろうとしたが、もう無理だった。
私は床を這って進んだ。
本当に、這ってトイレまで行った。
便器の前に辿り着いた瞬間、限界だった。
指を喉に突っ込み、無理やり吐いた。
一回。
二回。
三回。
四回。
吐き終わると少しだけ楽になったが、体の震えは止まらない。
「これは普通じゃない。」
私は震える手で119に電話した。
数分後、救急車が来た。
そのまま病院へ搬送。
高熱、下痢、手足の痺れ。
そのまま入院になった。
医師は首をかしげながら言った。
「原因は断定できませんが、魚が関係している可能性はあります。」
その言葉を聞いた瞬間、
頭に浮かんだのはあの黒い斑点だった。
実は、衣を剥がした時に違和感があり、
私はそのアジの写真を撮っていた。
レシートも残っていた。
退院後、私は店に連絡した。
事情を説明すると、店の反応は冷たかった。
「うちの商品に問題はありません。
」
つまり、信じていない。
私は静かに言った。
「写真、撮ってあります。」
斑点の写真とレシートを送った。
電話の向こうが、急に黙った。
それから数日後。
今度は店ではなく、保健所から電話が来た。
「商品について調査を行います。」
さらに数日後、店の本部から連絡が来た。
そして最後に――
店長本人から電話があった。
声は、最初に電話に出た店員とはまるで違った。
「この度は本当に申し訳ありませんでした。」
深く謝罪され、医療費のことまで気遣う言葉が続いた。
私は少しだけ間を置いて答えた。
「もう二度と行きません。」
電話を切った後、
数日ぶりにその店の前を通った。
昼の時間なのに、店の中は妙に静かだった。
前は昼になると人が並んでいたのに、
今は客がほとんどいない。
中を覗くと、
店内に客が一人もいない日もあると聞いた。
あの日、電話で言われた言葉を思い出した。
「それはうちの特色です。」
「向こうでは普通の作り方なんですよ。」
「気にしすぎじゃないですか?」
でも今なら、はっきり言える。
あれは“特色”なんかじゃない。
ただの傲慢だった。
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