引っ越しをした。
荷物を段ボールに詰め、古い部屋の鍵を返し、新しい部屋でカーテンの長さに絶望しながら、ようやく生活が落ち着き始めた頃だった。
ポストに一通の封筒が入っていた。
差出人は、NHK。
その文字を見た瞬間、なぜか肩が少し固まった。
別にやましいことをしているわけではない。
ただ、あのロゴを見ると、インターホン越しに「ご契約の確認で」と言われた記憶が勝手によみがえる。
私は玄関で立ったまま封筒を見つめた。
表には「転送不要」の文字。
いや、転送不要なのに新住所に届いている。
この時点で、すでにちょっと怖い。
部屋に入り、テーブルの上で封を切った。
中から出てきた紙には、丁寧な言葉でこう書かれていた。
「ご契約住所の変更のお知らせ」
私は眉をひそめた。
住所変更?
私は届けた覚えがない。
というより、まだそんな手続きまで頭が回っていなかった。
電気、ガス、水道、ネット。
役所。
銀行。
クレジットカード。
引っ越し後の手続きは、まるで人生の宿題フルセットみたいに襲ってくる。
その中で、NHKの住所変更は正直、後回しにしていた。
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