私は、夫に頼まれた通り、子供たちをお風呂に入れ終わるまで目を離さずにいるつもりだった。でも、現実は、そう簡単にうまくいくわけがない。
その日も、いつものように慌ただしい夕方だった。子供たちはお腹を空かせて、リビングで騒ぎながら走り回っていた。そんな中、私はやっとのことでキッチンで夕食の準備をしていた。
「お願い、少しだけ子供を見てて!」夫の声がリビングから響いた。その言葉に私は「うん、分かった」と返事をして、急いで夕食の最後の仕上げをしていた。どうしても、今日の夕飯を完璧に仕上げたかったから。
けれど、ほんの数分の間に、予期せぬ展開が待っていた。
「スマホなんか子供に見せるな!」突然、夫の声がピリッと張り詰めた。その瞬間、私は包丁を手にしたまま、手が止まった。
あれ? 私が子供たちに何か悪いことでもしてしまったのだろうか? それとも、私は何か間違ったことをしているのだろうか?
振り向くと、夫がスマホを手にして、真剣な顔で私を見ていた。その顔に私は不安を感じた。
「スマホ見てる場合じゃないでしょう!」夫はさらに声を荒げて、私に言い放った。
私は、今度は少し焦り始めた。「え? どうしたの?」
夫は一瞬、怒りの表情を見せた後、急に冷静になり、言葉を続けた。「お風呂に入ってる間にスマホ見てたら、子供が動き回って危ないじゃないか!」
「え? 私、ちゃんと見てたわよ!」私はしばらく固まったまま反論していたけれど、その後すぐに気づいた。
確かに、子供たちを見ているつもりだった。でも、スマホをちょっと触っただけで、子供たちがどんな状況になっていたか気づけなかった。
その瞬間、私は恐ろしいことに気づいた。
子供たちは、お風呂の近くでおもちゃを使って遊んでいた。そして、どこからか水が溢れて、床に広がっていた。足元が滑りそうになり、私の胸の奥に冷たいものが走った。
心臓がドクンと跳ねた。どうして気づかなかったんだろう? 私はあの瞬間、本当に子供たちを見ていなかった。
急いでスマホを放り投げ、リビングを飛び出してお風呂場に向かった。心の中で「大丈夫、大丈夫」と何度も呟いて、自分を落ち着けようとした。
そして、お風呂場のドアを開けると、子供たちは無事で笑っていた。
しかし、私の胸の中には不安と恐怖が渦巻いていた。
その時、私の脳裏に浮かんだのは、あの時夫が言った「スマホなんか見てるな」という言葉だった。今、私が気づいたこと、感じたこと。まさにその通りだった。
「子供から目を離してはいけない」その警告の意味が、今更ながら理解できた。
一瞬、反論した自分が恥ずかしくなった。なぜ私はスマホを手に取ってしまったのだろうか? どんなに些細なことであっても、子供たちの安全を守るためには、すべてに集中すべきだった。
でも、私はこの瞬間、何より大切なことを学んだ。
どんなに忙しい時でも、どんなに些細なことでも、子供の安全が一番だということ。
その後、夫に謝りながら、子供たちをしっかりと抱きしめた。もちろん、反論した自分に少し腹が立ったが、何よりも、この教訓を無駄にしてはいけないと思った。
「もう絶対にスマホを見ない。子供たちをちゃんと見守る」心の中でそう誓った瞬間、安心した気持ちが湧いてきた。
その日は少し反省し、夫とともに静かな夜を過ごした。
でも、何よりも、次からはスマホを手放さずに過ごすことを誓ったのでした。