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「折り返しください、でも相手の名前も番号も会社名もない」新入社員の電話メモが役に立たなすぎて、先輩がその場で受話器を渡して“自分で確認して”と言った話
2026/06/16

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朝から、社内はいつものように騒がしかった。

電話が鳴る。

コピー機が詰まる。

誰かが会議室の予約を間違える。

給湯室では、コーヒーの粉が切れたと小さな事件が起きている。

私は自分の席で、今日の打ち合わせ資料を確認していた。

午後に大事な商談がある。

相手先との日程調整も終わっている。

あとは細かい確認だけ。

そう思っていた。

その時、新入社員の子がこちらへ歩いてきた。

少し緊張した顔。

手にはメモ。

私は一瞬、嫌な予感がした。

入社してまだ日が浅い。

真面目ではある。

挨拶もする。

返事もいい。

ただ、毎回どこか一つ抜ける。

メールの件名がない。

添付ファイルがない。

「確認しました」と言いながら、何を確認したのか本人も分かっていない。

悪い子ではない。

悪い子ではないのだ。

でも、仕事は善良さだけでは回らない。

その子は私の机にメモを置いた。

「〇〇さん宛にお電話ありました」

私は顔を上げた。

「ありがとう。どちらから?」

すると、その子は少し考えた。

そして、明るく言った。

「打ち合わせの件みたいです」

私はメモを見た。

そこには、たしかにこう書いてあった。

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「〇〇さん宛にお電話ありました」

「折り返し下さいとの事です」

「打ち合わせの件みたいです」

「宜しくお願い致します!」

私は三秒ほど黙った。

丁寧。

字もきれい。

最後のビックリマークも元気。

しかし、肝心な情報がない。

誰から。

どこの会社から。

電話番号は。

何時にかかってきたのか。

どの打ち合わせの件なのか。

折り返し先はどこなのか。

全部ない。

私はもう一度メモを見た。

もしかしたら裏に書いてあるのかと思った。

裏も見た。

白い。

見事なまでに白い。

私は深呼吸した。

「えっと、相手の名前は?」

新入社員の子は、きょとんとした。

「聞いてないです」

「会社名は?」

「たぶん、打ち合わせの人です」

打ち合わせの人。

この世に何人いると思っているのか。

私は今日だけで三件打ち合わせがある。

明日もある。

来週もある。

社会人は意外と毎日誰かと打ち合わせをしている。

それを「打ち合わせの人」で特定できるほど、世の中は狭くない。

私はさらに聞いた。

「電話番号は?」

「あ、折り返しって言ってました」

「だから、どこに?」

「電話で……」

危ない。

私の中の何かが、そっと机を叩いた。

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電話で折り返すことは分かっている。

問題は、その電話番号だ。

私はできるだけ穏やかな声で言った。

「折り返しって言われた時は、相手の会社名、名前、電話番号、用件を聞くんだよ」

新入社員の子は、はっとした顔をした。

「そうなんですね」

そうなんですね。

その瞬間、私は自分の社会人一年目を思い出そうとした。

私も昔は何も分からなかった。

電話が怖かった。

敬語も変だった。

先輩に何度も怒られた。

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