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「落札したコインが0枚の空箱で届いた」売主は“発送した”、配送側は“事故かも”と責任逃れ…郵便局で開封確認した証拠を突きつけ、全額返金まで持っていった話
2026/06/16

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ドイツのコインオークションで、ずっと欲しかった一枚を落札できた。

画面に「落札」の文字が出た瞬間、私は思わず椅子から立ち上がった。

高かった。

でも、欲しかった。

写真で見た時から、もう頭から離れなかった。

古い銀色の光。

摩耗した縁。

表面に残る歴史の匂い。

ただの金属片ではない。

私にとっては、小さな時代そのものだった。

それから数日間、私は追跡番号を何度も見た。

ドイツから発送。

国際交換局。

日本到着。

通関。

配達予定。

画面が更新されるたびに、胸が少しずつ高鳴った。

「ついに来る」

その日は朝から落ち着かなかった。

仕事をしていても、頭の片隅にはコインがあった。

どんなケースに入れようか。

写真を撮ろうか。

まずはルーペで刻印を見ようか。

完全に浮かれていた。

そして、郵便局から連絡が来た。

荷物が届いているという。

私はすぐに受け取りに向かった。

窓口で出された段ボール箱を見た瞬間、少し違和感があった。

箱が軽い。

軽すぎる。

コイン一枚とはいえ、梱包材やケースが入っていれば、それなりの重みがあるはずだ。

でも、手に持った瞬間、スカッとしていた。

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嫌な予感が、背中をゆっくり登ってきた。

箱の端も、少し怪しかった。

つぶれている。

封の部分も、どこか頼りない。

私はその場で郵便局の方に言った。

「すみません、これ、中身を確認してから受け取ってもいいですか」

局員さんも、箱の状態を見て少し表情を変えた。

奥の確認スペースで、一緒に開封することになった。

カッターが封を切る音が、やけに大きく聞こえた。

心臓が嫌な速さで鳴っている。

箱が開く。

茶色い段ボールの内側が見える。

紙。

空間。

さらに奥。

私は息を止めた。

ない。

何もない。

いや、正確には、空気だけが入っていた。

コインがない。

ケースもない。

梱包材らしいものも、ほとんどない。

私がドイツのオークションで落札したはずの一枚は、そこに存在しなかった。

「……え?」

声が出た。

局員さんも中をのぞき込んで、困ったような顔をした。

私はもう一度、箱の中を見た。

あるはずのものを探す時、人間は空箱の中まで何度も見てしまう。

底。

隅。

折り返しの下。

そんなところにコインが隠れているはずもない。

でも探した。

探すしかなかった。

だって、ここまでずっと追ってきた荷物だ。

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ドイツから海を越え、国を越え、ようやく私の前に来た。

その中身が、空。

笑えない。

いや、少しだけ笑いそうになった。

あまりに見事な空振りで。

私は局員さん立ち会いのもと、開封確認をしてもらった。

そして、受け取りを拒否した。

受け取ってしまえば、あとが面倒になる。

中身がない箱を、私が受け取ったことになる。

そんなもの、家に持ち帰っても仕方ない。

コレクションケースには入らない。

飾っても虚無である。

こうして、その段ボール箱は空っぽのまま、送り主のいるドイツへ返送されることになった。

国際郵便で空箱が帰っていく。

なんだその旅。

中身より箱の方が移動している。

主役はどこへ行った。

その日から、私は先方とメールでやり取りをした。

英語の文章を何度も読み直し、翻訳も使い、状況を説明した。

郵便局で開封確認をしたこと。

中身がなかったこと。

受け取り拒否をしたこと。

写真も送った。

箱の状態も伝えた。

相手も驚いていた。

責めるような言い方はしなかった。

どこで消えたのか、こちらには分からない。

ドイツ側なのか。

輸送中なのか。

通関のどこかなのか。

それとも、もっと単純な梱包ミスなのか。

分からないからこそ、余計に気持ちが悪かった。

そして今日。

全額返金された。

金額は戻ってきた。

手続きとしては、きれいに終わった。

相手もきちんと対応してくれた。

そこには感謝している。

でも、私は画面の返金通知を見ながら、ため息をついた。

欲しかったのはお金ではない。

あのコインだった。

返金はありがたい。

けれど、落札できた時の高揚感までは戻ってこない。

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あの一枚を手に取る瞬間を楽しみにしていた時間も、空箱を開けた瞬間の脱力で全部どこかへ飛んでいった。

返金よりコインが良い。

本当に、それに尽きる。

お金は戻った。

でも、あのコインは戻ってこない。

今ごろどこにいるのか。

誰かの手元にあるのか。

どこかの仕分け場で迷子になっているのか。

それとも、最初から箱に入っていなかったのか。

考えても答えは出ない。

ただ、私はひとつ学んだ。

海外オークションは夢がある。

でも、夢は段ボール箱に入って届くとは限らない。

時には、空気だけが国際便でやって来る。

しかも、きっちり追跡番号つきで。

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