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「男女5人で女性専用風呂に入浴」ルール無視の迷惑客のせいで日帰り入浴が中止に…旅館がついに“営業休止”で毅然と対応した話
2026/06/24

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その日、私はいつものように日帰り入浴の受付に立っていた。

山の空気は澄んでいて、入口の外には温泉を楽しみに来たお客様の声が聞こえていた。

うちの露天風呂は、少し変わっている。

屋外にある。

しかも、階段を三百二十段ほど下りた先にある。

正直、気軽にひょいと行ける場所ではない。

それでも、そこまで歩いてでも入りたいと言ってくれる人がいる。

だからこそ、私たちも大事にしてきた。

案内板にも書いてある。

男湯。

女湯。

利用時間。

注意事項。

当たり前のことを、当たり前に守ってもらうための表示だ。

温泉は、ただお湯に入る場所ではない。

裸になる場所だ。

安心して入れることが、何より大事だ。

特に女性専用の浴場は、その「安心」が前提にある。

その前提が崩れたら、もう商売にならない。

問題が起きたのは、そんな普通の営業日のことだった。

最初に違和感を伝えてきたのは、女性のお客様だった。

顔色が悪かった。

声も少し震えていた。

「あの、女湯に……男性がいました」

一瞬、意味が分からなかった。

女湯に男性。

聞き間違いかと思った。

でも、お客様の表情は冗談ではなかった。

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さらに話を聞くと、男女五人ほどのグループが、女性専用の風呂に入っていたという。

私は背筋が冷えた。

頭の中で、案内板の文字が浮かんだ。

女性専用。

専用。

その二文字を、どう読んだら男女五人で入れる場所になるのか。

スタッフが現地へ確認に向かった。

階段を急いで下りる。

三百二十段。

普段なら景色を見ながら歩く道が、その時だけはやけに長く感じた。

戻ってきたスタッフの顔を見て、私は全部を察した。

事実だった。

悪い夢ではなかった。

本当に、女性専用の浴場が不適切に利用されていた。

怒りより先に、情けなさが来た。

ここまで書かないと分からないのか。

ここまで管理しないと守れないのか。

男女の区別。

専用表示。

入浴マナー。

そんなものは、温泉以前の話ではないのか。

もちろん、間違えた可能性を完全に否定するつもりはない。

初めて来た人なら、場所が分かりにくかったのかもしれない。

海外のお客様なら、表示の意味が十分伝わらなかったのかもしれない。

でも、それでも限度がある。

女湯に男女五人で入る。

それは「少し迷いました」では済まない。

他のお客様が恐怖を感じた時点で、もう事故だ。

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その場にいた女性のお客様は、せっかく温泉に来たのに、ゆっくり入ることもできなかった。

お湯の温度を楽しむどころではない。

景色を見る余裕もない。

裸の状態で、見知らぬ男性と同じ空間にいる。

それがどれほど怖いか。

考えれば分かるはずだ。

いや、考えなくても分かってほしい。

私は受付で謝り続けた。

本当に申し訳ありません。

怖い思いをさせてしまいました。

すぐに確認いたします。

その言葉を何度も口にしながら、内心では煮えくり返っていた。

謝るのは私たち。

怖い思いをしたのはお客様。

でも、原因を作った人たちは、きっと軽い気持ちだったのだろう。

「ちょっとくらい」

「誰もいないと思った」

「面白そうだった」

そんな程度の感覚だったのかもしれない。

その軽さで、施設全体の信用が壊される。

たまったものではない。

その後、旅館として判断した。

日帰り入浴は、当面休止。

営業再開は未定。

この決定は簡単ではなかった。

楽しみに来てくださるお客様がいる。

売上もある。

遠くから足を運んでくれる人もいる。

でも、安全と安心を守れないまま営業はできない。

「また同じことが起きたら?」

その一言に、誰も答えられなかった。

貼り紙を出す時、手が少し重かった。

日帰り入浴は、利用者の不適切利用が発覚したため、営業を休止いたします。

なお、営業再開は未定です。

短い文章。

でも、その裏には悔しさが詰まっている。

本当はこんな紙、貼りたくなかった。

本当は、普通にマナーを守ってくれる人たちに温泉を楽しんでほしかった。

けれど、一部の非常識のせいで、まともなお客様まで利用できなくなる。

これが一番腹立たしい。

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貼り紙を見た人たちは立ち止まった。

「何があったの?」

「不適切利用って?」

「日帰り入浴できないの?」

申し訳ない気持ちでいっぱいだった。

でも、同時に思った。

怒る相手を間違えないでほしい。

施設が意地悪で閉めているわけではない。

守らなければならない人がいるから閉めるのだ。

温泉は自由な場所ではある。

でも、何をしてもいい場所ではない。

裸になる空間だからこそ、信頼が必要だ。

その信頼を踏みにじる人がいるなら、施設は止めるしかない。

「旅館が怒りすぎ」と言う人もいるかもしれない。

でも、女性専用風呂に男女五人で入られて、笑って済ませる旅館の方が怖い。

私は最後に、空になった受付を見た。

いつもなら日帰り客でにぎわう時間。

そこにあるのは、静かな案内板と、休止を告げる紙だけだった。

三百二十段の先にあるお湯は、今日も変わらず湧いている。

でも、人のマナーが壊れれば、どんな名湯も閉じる。

温泉を止めたのは、お湯ではない。

非常識な人間の方だった。

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