新幹線に乗り込み、自分の座席を確認したとき、私は少し安心した。
隣の座席に荷物もなく、ゆったり座れるはずだった。
しかし前を見ると、小型犬が座席に座ってどっかりと陣取っているではないか。
尻をシートに押し付けて、目を細め、まったく退く気配はない。
飼い主はそのまま寝ている。頭は座席に落ち、スマホすら見ていない。
その結果、隣の私の座席も、通路も実質使えない状態になっていた。
「……え?」
思わず立ち止まる。犬と飼い主、そして通路の占拠状況を一瞬で理解した。
母の車いすや荷物を通す余地はほとんどなく、このままでは自分も通れない。
「すみません、座席が使えないんですけど」
小声で声をかけたが、飼い主はまったく反応しない。
周囲の乗客もちらりと見ているだけで、誰も動こうとしない。
見て見ぬふり、完全に無関心。
私はスマホを取り出し、状況を写真に記録した。
犬の位置、飼い主の態度、通路の幅、隣席の占有状態。
これで後で説明する際、証拠になる。
数秒悩んだ後、私は車掌を呼ぶことにした。
「すみません。前の座席に小型犬が座っていて、飼い主は寝たまま気づいていません。座席が使用できません」
車掌はすぐに状況を確認し、眉をひそめる。
「犬ですか?飼い主は寝たままですか?」
「はい、周囲も困っています」
数秒間、車掌は静かに視線を巡らせた。
すぐに車内アナウンスが流れる。
「前席に座っている小型犬について、飼い主の方は至急対応をお願いします」
ざわめく車内。乗客の視線が飼い主と犬に集中する。
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