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最悪の店だと思った――でもレジ裏を見た瞬間、誰も文句を言えなくなった
2026/05/10

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「水しか飲まないなら、他店へどうぞ」

店の入口に貼られたその張り紙を見て、正直、私は最悪の店だと思った。

ゴールデンウィーク中、友人と焼き鳥を食べに来ただけだった。

でもその店は、“全員アルコール注文必須”。

しかも、

「水だけでいい」「焼き鳥だけ食べたい」

そんな客は来るなと、はっきり書いてあった。

運転がある人は?酒を飲めない人は?

色々おかしいだろと思った。

友人の一人が店員に聞いた。

「すみません、車なんでソフトドリンクでも大丈夫ですか?」

すると店員は、慣れた顔で言った。

「申し訳ありません。当店はアルコール注文制です」

友人は苦笑いした。

「いや、運転なんですけど…」

その瞬間。

奥から店主らしき男が出てきた。

五十代くらい。

無愛想で、いかにも頑固そうな顔。

そして一言。

「飲めないなら他行ってください」

空気が凍った。

店内にいた客まで、こちらを見ていた。

正直、かなり腹が立った。

友人もムッとして、

「そんな言い方あります?」

と言い返した。

でも店主は全く引かない。

「ウチ、居酒屋なんで」

その態度に、私は完全に“感じ悪い店”認定した。

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SNSで炎上するタイプだと思った。

すると隣席の常連っぽい男が、苦笑いしながら口を挟んできた。

「まぁまぁ。店主も前はこんなんじゃなかったんだよ」

私は意味がわからなかった。

すると男は、焼酎を飲みながら続けた。

「最近、水だけ頼んで3時間居座る客とか増えてさ」

「焼き鳥数本で、ずーっと騒ぐグループも多かった」

「で、回転率落ちて、店が赤字寸前までいったんだよ」

店主は黙ったまま、焼き場で串を返している。

でもその横顔は、怒っているというより、疲れ切っているように見えた。

さらに常連は言った。

「しかも最近、“居酒屋は公共施設”みたいな客増えたからな」

「酒頼まない、追加頼まない、でも席だけ占領」

「そりゃ壊れるよ」

私は少し黙った。

するとそのタイミングで、別のグループ客が入ってきた。

若い男3人。

席につくなり言った。

「とりあえず水で」

店員が説明すると、一人が露骨に舌打ちした。

「は?客に酒強制とかヤバくね?」

さらに、

「SNS載せるわ」

と言い始めた。

店内の空気が一気に悪くなる。

でも店主は静かだった。

そしてレジ横から、一枚の紙を出した。

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そこには、先月の営業データ。

アルコール注文客と、水だけ客の平均単価が書かれていた。

さらに。

長時間滞在による回転率低下。

赤字の日。

潰れかけた月。

全部数字で並んでいた。

店主は初めてこちらを見た。

「好きでこんなルールにしたわけじゃないです」

「でも、守らないと店が死ぬんですよ」

その声は、怒鳴り声じゃなかった。

諦めきった人間の声だった。

さっきまで騒いでいた若い客も、黙った。

誰も反論できなかった。

結局その3人は、文句を言いながら店を出て行った。

でも、残った常連客たちは誰も笑わなかった。

たぶんみんな知っていたんだ。

店側も、好きで客を拒絶してるわけじゃないって。

帰り際。

店主が運転代行の番号一覧を、無言で差し出してきた。

「…飲める人だけで、また来てください」

不器用だった。

でも、最初に感じた“嫌な店”とは、少し違って見えた。

最近、“客だから何してもいい”と思ってる人、本当に増えたと思う。

でも店にも、守らなきゃいけない生活がある。

あの張り紙は、ただの高圧ルールじゃなかった。

潰れかけた店主の、最後の防衛線だったんだと思う。

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2026/07/08
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