雨の日のレンタカー屋は、妙に静かだ。
ワイパーの音だけが店の前を往復し、濡れたアスファルトに車のライトがぼんやり反射していた。
私はカウンターの中で返却予定表を眺めながら、今日も平和に終わると思っていた。
そう。
思っていた。
夕方、例のレンタカーが戻ってきた。
銀色のコンパクトカー。
貸し出す前に洗車して、傷チェックもして、写真も撮ってある。
いつもの流れで外装確認に向かった私は、後ろのフェンダーを見た瞬間、足が止まった。
へこんでいる。
しっかり、へこんでいる。
「これ、どうされました?」
私はできるだけ落ち着いた声で聞いた。
お客様は一瞬だけ目をそらした。
その反応で、だいたい察した。
「あー、ちょっと当てたかも」
ちょっと。
便利な言葉だ。
人は自分に都合が悪い時、だいたい何でも“ちょっと”にする。
ちょっと当てた。
ちょっと遅れた。
ちょっと払えない。
でも車のへこみは、ちょっとではなかった。
写真を撮り、貸出前の画像と見比べる。
貸出前は何もない。
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